京成3600形電車

京成3600形電車：進化と変遷を遂げた通勤電車

1982年から1989年にかけて京成電鉄に導入された3600形電車は、省エネルギー性、保守の容易さ、そして安全性の向上を目的として開発された通勤型電車です。3500形の後継として、京成電鉄の通勤電車の新たな標準車両を目指して誕生しました。全54両（6両編成9本）が製造され、長きに渡り京成電鉄の路線で活躍しました。本記事では、2013年まで芝山鉄道にリースされていた車両についても触れ、3600形電車の全貌に迫ります。

開発と製造

3600形電車は、厳しい経営状況にあった京成電鉄において、コスト削減と効率化を重視して開発されました。最初の編成である3608編成は1982年6月に東急車輛製造で落成。東急車輛から京成高砂検車区への回送には、3050形電車が牽引車として使用されました。営業運転開始は同年7月16日、京成高砂駅から京成上野駅へ向かう普通列車としてデビューしました。その後は、財政状況に合わせて増備ペースが調整され、1989年までに全編成の製造が完了しました。

車両の特徴

車体

車体は3500形を基本にしながら、軽量オールステンレス構造を京成電鉄の車両として初めて採用しました。これは、省エネルギー化に大きく貢献しました。窓配置は、ドア間と車端部にそれぞれ2枚の窓を配置し、車端部の窓は独特の狭い形状となっています。前面形状は3面折妻となり、種別表示器や行先表示器を配置。前面上部中央の表示器は行先表示のみに特化され、行先表示器は40コマタイプへと進化しました。また、前照灯、尾灯、急行灯の位置も変更され、視認性が向上しました。この前面デザインは、後に製造された3150形、3200形、3300形にも継承されました。運行番号表示器は、当初は幕式でしたが、2003年から2004年にかけてLED式に交換されました。種別表示幕も、ダイヤ改正に合わせて何度か交換され、書体や色分けが変更されました。塗装も、当初のファイアーオレンジの帯から、青や赤を組み合わせたデザインへと変更されていきました。

車内

車内は3500形を踏襲しつつも、天井部の化粧板を荷棚上まで拡大するなど、改良が施されています。また、車両間の貫通路は狭幅となり、各車両の上野方に貫通扉が設置されました。

機器

3600形では、京成電鉄の通勤車として初めて界磁チョッパ制御方式が採用されました。主電動機は出力140kWの高出力電動機、補助電源装置には静止形インバータ（SIV）を採用しました。台車は、モハがFS-513、クハがFS-013です。集電装置は下枠交差式パンタグラフを各編成の末尾2と6に2台設置。冷房装置はCU-15CとCU-15Bが混在して搭載されました。製造時期によって、網棚の材質、室内照明、電子警報器、側灯・尾灯、空気圧縮機、選択扉開閉装置などに違いがあります。

編成と改造

3600形は、当初6両編成で運用されました。車両番号は成田空港方からクハ、モハ2両ユニット、モハ2両ユニット、クハの順で、将来の8両編成化を見据えて末尾4と5は欠番とされました。1997年から8両編成化が進められ、6両編成を解体して8両編成を組成しました。その際に余剰となった制御車をVVVFインバータ制御方式に改造して新たな6両編成を組成しました。2000年には事故により車両が損傷したものの、修復後に元の編成に戻されました。VVVFインバータ制御への改造は、東洋電機製造製のGTO素子使用のVVVFインバータとTDK-6170-Aかご形三相誘導電動機などを用いて行われました。

芝山鉄道へのリース

3618編成は2002年から2013年まで芝山鉄道にリースされました。この間、芝山鉄道のイメージカラーである赤と緑の帯に変更され、運用されました。リース終了後、京成電鉄に返却され、帯の色も変更されました。

運用と廃車

3600形は、京成線だけでなく、都営地下鉄浅草線にも乗り入れて運用されました。6両編成は本線での普通運用や快速運用、4両編成は千葉線・千原線、金町線などで運用されました。2022年からは、ワンマン運転も開始されました。2017年から廃車が始まり、2020年現在では6両編成1本と4両編成1本が在籍しています。

まとめ

京成3600形電車は、省エネルギー性や保守性の向上、そして時代の変化に合わせて様々な改造を施されながら、長年にわたり京成電鉄の路線で活躍しました。その歴史と技術的な特徴は、現代の通勤電車にも大きな影響を与え続けています。

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