京橋 (広島市)

広島市京橋：歴史と平和のシンボル

広島市京橋は、広島県広島市の京橋川に架かる橋梁です。1591年、毛利輝元が広島城に入城した際に、城から京都に通じる道として木橋が架けられました。この橋の名は、京橋川と京橋町という地名にもその由来を見ることができます。

古代の礎と西国街道

京橋が架けられた地は、太田川下流域の三角州に位置し、かつては低湿地が広がる土地でした。広島城の築城に伴い城下町が発展する中、京橋は重要な交通路としての役割を担いました。『芸州広嶋城町割之図』など、古地図にもその姿が確認できます。この時代、京橋は西国街道の一部として機能し、豊臣秀吉も通行した記録が残っています。一般的には江戸時代初期に福島正則が西国街道を整備したとされていますが、既に安土桃山時代に街道が形成されていたとする説もあります。

当初、橋の幅は4.6メートルほどと定められ、広島藩の架橋制限により京橋川唯一の橋であったことから、猿猴橋と共に交通の要衝となりました。参勤交代が義務化されると、当初は海路が用いられていましたが、1754年頃からは陸路が主流となり、京橋の重要性が増しました。

この時代には、厳島神社の管絃祭において、京都祇園祭の山鉾を模した豪華な御供船が京橋川にも登場し、京橋は祭りの賑わいの中心でもありました。1852年には、御供船を見物する人々の多さで京橋が崩落する事故も発生しています。木橋時代の橋の長さは約65メートル、幅は6.3メートルほどであったと推定されています。

近代化と被爆

明治時代以降は国道2号線の橋として、人や車の往来が激しくなりました。日清戦争時には広島大本営が広島城内に設置され、明治天皇もこの橋を通行しました。

1926年から1927年にかけて、国道整備の一環として鋼橋に架け替えられました。開通式は盛大に行われ、多くの市民が訪れました。工事費は当時の金額で7万円でした。猿猴橋のような装飾はありませんでしたが、立派な橋として人々に親しまれていました。しかし、猿猴橋と同様に幅員が狭かったため、昭和初期には相生通りが新しい国道として整備されました。

1945年8月6日、広島市への原子爆弾投下により被爆しました。爆心地から約1.38キロメートルの地点に位置していましたが、爆風の方向に架かっていたため落橋を免れ、親柱の上部がずれた程度の被害にとどまりました。そのため、被爆直後から避難経路や救援活動の通路として重要な役割を果たしました。パラシューチン夫妻ら、被爆した外国人もこの橋を通行しました。同年9月と10月の台風にも耐え抜いた堅牢さも特徴です。

現代の京橋

1950年に稲荷大橋、1966年に上柳橋といった幅員の広い橋が架橋されたことで、京橋の交通量は減少しました。現在では、地元住民の生活道路として静かにその役割を担っています。

1993年には被爆橋梁としてリストアップされ、2011年には土木学会選奨土木遺産にも選定されています。歴史的意義から、広島市は優先的に維持管理を行っています。

周辺環境

京橋周辺には、上流側に上柳橋、下流側に稲荷大橋があります。東へ進むと、駅前大橋を渡ればJR広島駅へと至ります。かつては東へ進むと猿猴橋へと繋がっていました。西岸には、多くの雁木が残っており、これは国内最大級の規模を誇ります。雁木群も土木学会選奨土木遺産に選定されています。水辺の環境を生かしたオープンカフェなども整備され、市民の憩いの場となっています。西側には世界平和記念聖堂、エリザベト音楽大学、広島市立幟町小学校、東側には広島グランドインテリジェントホテルなどが立地しています。

京橋は、単なる橋梁としてだけでなく、広島の歴史、そして平和への願いを象徴する存在となっています。

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