仁科盛能

仁科盛能（にしな もりよし）

生涯

仁科盛能は、戦国時代の武将で、信濃国安曇郡を拠点とする国人・仁科氏の一族です。彼は森城を本拠地としていました。仁科氏は、元々安曇郡で勢力を持っていましたが、盛能の祖父にあたる仁科盛直の時代に、1480年の穂高合戦で信濃守護・小笠原長朝に敗北し、一時的に諏訪氏を頼ることになります。その後、盛能の時代になり、小笠原氏との関係を再構築し、小笠原長時に娘を嫁がせ臣従しました。

しかし、信濃の情勢は常に変化していました。甲斐国の武田晴信（後の信玄）が信濃へ侵攻を開始すると、盛能は小笠原長時と共に武田氏に対抗しました。1548年、上田原の戦いで武田晴信が村上義清に敗れると、その隙を突いて、小笠原長時らと共に武田領の下諏訪へ侵攻しました。しかし、この時、小笠原長時が盛能の諏訪支配を認めなかったため、両者の関係は悪化し、盛能はすぐに兵を退きました。このことが、同年の塩尻峠の戦いでの小笠原氏の大敗につながったとされています。

その後、盛能は武田氏との関係を深めることになります。『高白斎記』によれば、1550年7月15日、仁科上野介（盛政の可能性あり）と共に駒井高白斎と交渉し、小笠原長時が追放された後、武田家に出仕したと記録されています。同年には、盛能自身の判物状も発給されており、仁科氏が独自の領域支配を行っていたことが示されています。しかし、この後、『高白斎記』や1556年の仁科神明宮棟札には盛能の名前が見られなくなるため、この頃に家督が盛康に交代したと考えられています。

このように、仁科盛能の生涯は、戦国時代の地方豪族が、大勢力の間でどのように立ち回り、生き残りを図ったかを示す好例と言えるでしょう。彼は、小笠原氏との同盟、武田氏への転身など、激動する情勢の中で、自らの勢力を維持しようと努めました。彼の行動は、戦国時代の武将の典型的な姿を示すものとして、歴史の中で注目されています。

脚注

出典
『大町市史』
* 大貫茂紀『戦国期境目の研究』高志書院、2018年

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