仙台市野草園

概要

仙台市野草園は、宮城県仙台市太白区の大年寺山公園内に位置し、東北地方に自生する野草を中心とした植物を展示する植物園です。園内では、高山植物から水辺の植物まで、様々な環境に適応した野草が観察できます。園の管理は、仙台市からの委託を受け、公益財団法人仙台市公園緑地協会が行っています。

園内は、大年寺山の北西斜面、標高64mから117.1mにかけて広がっており、北東部には針葉樹、南東部には高山植物、中央西側には芝生広場があります。また、野草館という屋内展示施設や、池、ツバキやナラなどの広葉樹も配置されています。園路には「萩のトンネル」や水[[琴窟]]、彫刻などが点在しており、散策を楽しむことができます。年間を通じて様々な催し物が開催されており、特に秋の萩まつりは有名です。

園の面積は9.5ヘクタールで、約500種の草本と370種の木本が植栽されています。入園料は大人200円、子供50円で、野草館の利用は無料です。開園期間は3月20日から11月30日（無休）ですが、野草館は通年利用可能です（12月28日～翌年1月4日は休館）。入園券は野草館内で販売されています。野草館内には、市民が利用できる企画展示室や図書室（「叢林文庫」）、喫茶店などが併設されています。

歴史

仙台市野草園の構想は、学者である加藤多喜雄氏が、弟の加藤陸奥雄氏とともに仙台市に提案したことが始まりです。当時、戦後の復興が進む仙台市において、かつて身近だった野草が失われつつあることを憂いた加藤氏は、20万坪の敷地で自由に野草を採集できる場所を作ろうと考えました。

当時の仙台市長であった岡崎栄松氏は、1949年（昭和24年）に取得した大年寺山の4万坪を提供することを快諾しました。大年寺山は、かつて伊達氏の所有地でしたが、後に国に売却され、少年院が建設される予定でした。しかし、風致地区に指定されていた大年寺山に一般市民が立ち入れなくなることを懸念した住民たちの反対運動により、仙台市が取得することになりました。

野草園の構想に対し、加藤氏は、その程度の面積では通常の植物園しか作ることができず、自由に採集できる環境は作れないと一旦は断念しました。しかし、岡崎市長は諦めず、半年かけて加藤氏を説得し、野草園計画がスタートしました。

1951年（昭和26年）には建設工事が開始され、失業対策事業の労務者約9,000名を中心に、人力で造成が行われました。近隣の東北少年院の生徒たちも建設に協力しました。野草の採集には、仙台野草の会会長の中村彪氏の指導のもと、市職員、仙台野草の会会員、宮城県農業高等学校生物班、仙台高等学校生物部など、多くの人々が協力しました。

1954年（昭和29年）7月21日、仙台市野草園は開園しました。開園当初の入園料は大人10円、子供5円でした。地元に自生する野草を集めた植物園は、当時としては珍しく、開園初年度は半年で3万8千人が訪れ、その後も順調に入園者数を伸ばしました。1950年代はまだ自然保護に対する意識が低く、1959年（昭和34年）にはヤマユリの球根の盗難事件も発生しました。しかし、時が経つにつれて野草園は市民に高く評価されるようになりました。

発足当初、野草園は建設局土木部土木課に属していましたが、その後、所属部署は何度か変更され、1993年（平成5年）には仙台市公園緑地協会に管理が委託されました。2008年（平成20年）には、企画展示スペースを備えた新しい野草館がオープンし、入園券の購入も野草館内で行われるようになりました。

年表

1950年（昭和25年）4月17日：加藤多喜雄が仙台市長に野草園の構想を申し入れ。
1950年（昭和25年）9月14日：関係者による最初の打ち合わせ。野草園の名称が決定。
1951年（昭和26年）3月23日：起工式。
1951年（昭和26年）7月21日：開園。建設局土木部土木課に所属し、初代野草園主任に鈴木光三が就任。
1956年（昭和31年）：建設局土木部緑地課に所属変更。
1957年（昭和32年）：土木局公園課に所属変更。
1958年（昭和33年）9月12日～14日：第1回萩まつり開催。
1959年（昭和34年）：建設局公園課に所属変更。
1959年（昭和34年）：ヤマユリの球根が大量盗難される。
1965年（昭和40年）：第2代野草園主任に菅野邦雄が就任。
1966年（昭和41年）：建設局計画部公園課に所属変更。
1967年（昭和42年）4月：野草館新築。
1971年（昭和46年）：野草園主任が園長に改称。
1972年（昭和47年）：緑地部公園課に所属変更。
1980年（昭和55年）：公園管理事務所に所属変更。
1993年（平成5年）：仙台市公園緑地協会に管理委託。
2000年（平成12年）：仙台市が「わがまち緑の名所100選」の一つに野草園を選定。
2008年（平成20年）4月12日：新野草館が開館。旧入口は廃止。

萩まつり

仙台市野草園では年間を通して様々なイベントが開催されていますが、中でも最も有名なのが「萩まつり」です。仙台市は、かつて歌枕として知られた「宮城野の萩」があることから、市の花を「萩」としています。また、宮城県の花はミヤギノハギであり、他にもセンダイハギがあるなど、萩との繋がりが深い地域です。園内には「萩のトンネル」があり、萩の花を楽しむことができます。

第1回萩まつりは1958年（昭和33年）に開催されました。来場者にふるまわれる萩茶は、第1回から改良を重ねたものです。期間中の日曜・祝日には、琴や尺八による邦楽演奏や、「花の詩の集い」と題した仙台フィルハーモニー管弦楽団との合唱などのイベントが開催されます。例年、定禅寺ストリートジャズフェスティバルin仙台と開催時期が重なります。

アクセス

仙台市営バス: JR仙台駅西口バスプール6番から「野草園前行」に乗車し、終点で下車（所要時間約20分）。徒歩1分。
X610系統として、「野草園前・東北工大長町キャンパス経由長町四丁目・長町営業所行き」も運行。
長町駅または長町南駅から乗車する場合は、X610系統とは逆ルートになるため、各バスプールからS610またはK610系統に乗車し、「野草園前」で下車。
駐車場: 30台（無料）

参考文献

仙台市公園緑地協会『仙台市野草園開園40周年記念　野草園春秋』、河北新報社、1994年、ISBN 4-87341-068-1。
菅野邦夫「四十周年余録」。
仙台市野草園『野草園の年輪　30年の歩み』、仙台市、1984年。
加藤多喜雄「仙台市民の野草園」。
鈴木光三「沿革のあらまし」。
寺田利和「野草園史参考資料」。
仙台市野草園開園50周年記念誌編纂委員会『仙台市野草園植物目録（コケ植物、シダ植物、種子植物）（第4版）』、仙台市、2004年。

関連項目

仙台市内の公共施設一覧
日本の植物園一覧
仙台市の音楽イベント

外部リンク

公益財団法人仙台市公園緑地協会
野草園

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