代々幡町

代々幡町（よよはたまち）とは

代々幡町は、かつて東京府豊多摩郡に存在した町です。1889年（明治22年）に南豊島郡の代々木村と幡ヶ谷村が合併し、代々幡村として誕生しました。その後、1896年（明治29年）に南豊島郡が東多摩郡と合併して豊多摩郡となり、代々幡村は豊多摩郡に引き継がれました。1915年（大正4年）には、代々幡村が町制を施行し、豊多摩郡代々幡町となりました。

しかし、1932年（昭和7年）には、郡ごと東京市へ編入され、渋谷町、千駄ヶ谷町と合併して渋谷区となり、代々幡町は歴史の中に姿を消しました。代々幡村は、京王電気軌道（現在の京王電鉄）創業の地であり、京王グループ発祥の地としても知られています。

地名の由来

「代々幡」という地名は、「代々木」の「代々」と「幡ヶ谷」の「幡」を組み合わせて作られた合成地名です。当時は、いくつかの施設名にも用いられていましたが、東京市に編入され代々幡町が消滅して以降、これらの施設は順次改称されたり、廃止されたりしました。現在、その名残をとどめているのは代々幡斎場のみです。また、幡代小学校の「幡代（はたしろ）」という名前は、村名に代々木を優先したため、小学校名では幡ヶ谷を優先したと言われています。

人口の推移

代々幡町の人口は、以下の通り推移しました。

1920年：20,034人
1925年：51,755人
1930年：70,577人

代々幡村と京王電鉄

代々幡村は、京王グループの創業地です。京王電気軌道（現：京王電鉄）は、1910年（明治43年）9月21日に資本金125万円で設立され、本店は東京府豊多摩郡代々幡村大字代々木字山谷291番地に置かれました。翌1911年（明治44年）には電気供給事業の許可を受け、同年10月10日には本店を代々幡村大字代々木207番地に移転しました。

1912年（明治45年）4月には、代々幡村を含む新宿 - 調布間の鉄道路線を開業するため、線路敷設の第一期工事が開始されました。また、同年8月には府中火力発電所の建設および調布町 - 府中町 - 西府村の電灯線工事も開始され、年末までに完成しました。1913年（大正2年）1月1日からは、調布町、多磨村、府中町、西府村への送電が開始され、これらの地に初めて電気が灯りました。同年4月15日には、京王線の笹塚 - 調布間が開通し、同時に新宿 - 笹塚間および調布 - 国分寺間では、東京初となる乗合自動車事業（現在の京王電鉄バス）が開始されました。同年8月31日には、本店を代々幡村大字幡ヶ谷1045番地に移転しています。

そして、同年10月11日には、京王線が代々幡駅まで延伸され、この地に鉄道がもたらされました。鉄道の開通に伴い、1914年（大正3年）2月1日には調布方面の乗合自動車営業は休止されました。同年4月8日には、幡代小学校付近に幡代小学校前駅が開業、6月11日には代々木駅、同年11月19日には天神橋駅および新町駅が開業し、京王線は新宿へ向かって順次延伸されました。翌1915年（大正4年）3月31日には葵橋駅、同年5月1日には停車場前駅（のち省線新宿駅前駅に改称）が開業、同年5月30日には新宿追分交差点に新宿追分駅が開業し、京王電気軌道の路線はついに調布から新宿まで到達しました。

調布から府中方面への延伸工事も進められ、1916年（大正5年）6月1日には調布 - 多摩川原間（後の京王相模原線区間）が開業、9月1日には調布 - 飛田給間が開通、10月31日には府中駅が開業し、京王線の新宿 - 府中間が全通しました。その後、玉南電気鉄道を1925年（大正14年）3月24日に府中 - 東八王子間で全線開業させ、1926年（大正15年）12月4日に京王電気軌道に合併しました。翌1927年（昭和2年）10月28日には、本社ビル「京王新宿ビルディング」が完成したのに伴い、新宿追分駅をビル1階に移転し、本社を代々幡から新宿へ移転しました。京王電鉄の黎明期の歴史は、創業の地である代々幡で大きく展開されたのです。

代々幡駅は、現在の京王線の初台駅と幡ヶ谷駅の間に位置し、現在の幡代小学校の前より幡ヶ谷寄りにありました。その後、1934年（昭和9年）1月19日に「幡ヶ谷本町駅」へ改称され、さらに1937年（昭和12年）9月1日に「幡代駅」へ改称された後、戦時中の1945年（昭和20年）7月24日に廃止されました。付近には、京王バス東（渋63・渋66系統）、渋谷区コミュニティバス「ハチ公バス」春の小川ルート（京王バス東・永福町営業所が運行）の「幡代」バス停留所が現在も存在します。

また、1939年（昭和14年）7月21日には、京王電軌の代々木駅が「西参道駅」へ改称され、代々幡駅と同時に不要不急駅として廃止されました。京王バス東と新宿区コミュニティバス「新宿WEバス」（京王バス東・中野営業所が運行）の「西参道」停留所として、その名残をとどめています。

「代々幡」の名を冠する主な施設

代々幡斎場：渋谷区西原二丁目にある斎場。火葬場と複数の式場を備えた総合施設で、現在もこの名前で営業しています。
代々木上原駅：小田急小田原線の駅。1927年に「代々幡上原駅」として開業し、1941年に現在の名称に改称されました。
代々幡警察署：1925年に淀橋警察署分署が昇格して「代々幡警察署」が設立されました。位置は幡代小学校の西隣でした。その後1932年に「代々木警察署」と改称、戦後になって甲州街道の反対側の現在地へ移転しました。
代々幡郵便局：1932年に幡代小学校の東隣に普通郵便局として「代々幡郵便局」が開局しました。1950年に「代々木郵便局」と改称し、さらに現在地に移転しました。

教育機関

代々幡町には、以下のような教育機関が存在していました。

東京帝国大学農科大学（敷地の一部）
私立名教中学校
文化裁縫女学校
小西写真専門学校
二階堂体操塾
幡代実業補修学校
幡代尋常高等小学校
中幡尋常小学校
笹塚尋常小学校
上原尋常小学校
西原尋常小学校
富谷尋常小学校
私立早蕨幼稚園

参考文献

東京府豊多摩郡『東京府豊多摩郡誌』 1916年
京王帝都電鉄総務部『京王帝都電鉄30年史』1978年