ハチ公バス

渋谷区コミュニティバス「ハチ公バス」

渋谷区が運行するコミュニティバス「ハチ公バス」は、区民の生活を支える重要な交通手段です。正式名称は「渋谷区コミュニティバス」ですが、忠犬ハチ公にちなんだ愛称が広く利用者に親しまれています。

概要

渋谷区内には、渋谷駅を中心に多くのバス路線が運行されていますが、それらは幹線道路沿いが中心で、住宅地へはあまり乗り入れていませんでした。そこで、高齢者や障害者など交通弱者にも利用しやすいコミュニティバスの運行を求める声が高まりました。

また、渋谷区は南北に長く、区内北部を走る鉄道は新宿駅を起点としているため、区民が区内の公共施設へ行くには渋谷駅での乗り換えが必要となる場合もありました。このような背景から、区内の公共交通空白地帯を解消し、公共施設へのアクセスを確保するために、コミュニティバスの導入が検討されました。

2000年7月に「渋谷区コミュニティバス導入検討委員会」が設置され、区民からの要望調査を経て、2003年3月28日に「夕やけこやけルート」、2004年9月2日に「春の小川ルート」が開業しました。当初は2ルートでの運行が決定していましたが、狭隘区間の運行に必要な関係機関との協議がスムーズに進んだことから、Bルートが先行して開業しました。

運行は、当初、京王バスと東急バスに委託されましたが、その後東急バスの一部路線は子会社の東急トランセに委託されました。しかし、2024年4月1日に東急トランセが東急バスに吸収合併されたため、委託は終了しています。運行コストは、各運行事業者が負担し、赤字分を区が補助する方式です。

沿革

• - 2000年7月: 「渋谷区コミュニティバス導入検討委員会」設置
• - 2000年8月: 区民を対象に運行に関する調査を開始
• - 2001年7月: 運行開始に向けて「Aルート」「Bルート」を発表
• - 2002年1月: 運行事業者の選定を実施、Aルートが京王バス、Bルートが東急バスに決定
• - 2003年3月28日: Bルート「夕やけこやけルート」が運行開始、東急バスが受託
• - 2003年11月16日: 「夕やけこやけルート」の運行事業者を東急バスから東急トランセへ管理委託
• - 2004年9月2日: Aコース「春の小川ルート」が運行開始、京王バス東（当時）が受託
• - 2008年2月29日: 「神宮の杜ルート」が運行開始、フジエクスプレスが受託
• - 2010年6月: 渋谷区文化総合センター大和田の完成により「文化総合センター大和田」停留所を開設、「夕やけこやけルート」が同停留所経由へ経路変更
• - 2015年10月13日: 渋谷区役所庁舎建て替えのため、一部経路の変更および停留所の仮設置、期間限定の乗継対応を行う
• - 2018年9月30日: 「春の小川ルート」本町付近における添乗員の添乗を終了
• - 2019年1月14日: 渋谷区役所新庁舎開業によって経路変更、停留所の改廃が実施。乗り継ぎ対応が終了
• - 2021年11月1日: 神宮の杜ルートの一部便を、フジエクスプレスから東急バスへ移管
• - 2021年12月16日: 神宮の杜ルートからフジエクスプレスが撤退、全便が東急バスによる運行となる。これに伴い、フジエクスプレスが保有するハチ公バス専用車も全車が東急バスへ移籍する。
• - 2024年4月1日: 東急トランセの東急バスへの吸収合併に伴い、「夕やけこやけルート」「神宮の杜ルート」の東急トランセへの管理委託が終了、東急バスによる運行となる。

運賃・乗車券類

運賃は大人・小児ともに100円均一で、現金や交通系ICカード（PASMO・Suica）が利用可能です。専用回数券は2000円で21枚綴り（2100円分）で、車内や担当営業所で購入できます。ただし、東京都シルバーパスや障害者手帳による割引は適用されません。

PASMOは、2009年3月16日に「夕やけこやけルート」、2010年9月16日に「春の小川ルート」で利用可能になりました。「神宮の杜ルート」は開業当初から利用可能でした。

現行路線

ハチ公バスは、以下の4つのルートで運行されています。

春の小川ルート

渋谷区役所を起点に、原宿駅入口、代々木八幡駅入口、新国立劇場、幡ヶ谷不動尊、本町幼稚園、笹塚こども図書館、笹塚駅などを経由する循環ルートです。京王バス中野営業所が運行を受託しています。

このルート名は、唱歌「春の小川」の作詞者である高野辰之が代々幡村（現在の代々木三丁目）に居住し、富ヶ谷を流れていた河骨川が歌のモチーフとされたことに由来します。

夕やけこやけルート

渋谷区役所を起点に、国立代々木競技場、宮下公園前、渋谷駅ハチ公口、文化総合センター大和田、恵比寿駅などを経由する循環ルートです。東急バス淡島営業所が運行を受託しています。

このルート名は、童謡「夕焼小焼」の作曲者である草川信が渋谷区立長谷戸小学校で音楽教師をしていたことに由来します。東急バス車内では「渋谷循環線」という名称が用いられています。

神宮の杜ルート

渋谷駅西口を起点に、渋谷区役所、明治神宮（原宿駅）、明治神宮前駅、表参道ヒルズ、表参道駅、千駄ヶ谷駅などを経由する循環ルートです。東急バス淡島営業所が運行を受託しています。

このルート名は公募で決定されたもので、他のハチ公バスのルート名とは異なり、楽曲のタイトルを借用していません。

丘を越えてルート

渋谷駅西口を起点に、東急百貨店本店前、東大裏、富ヶ谷交差点、代々木上原駅などを経由する循環ルートです。京王バス中野営業所が運行を受託しています。

このルート名は、古賀政男が居住していた渋谷区上原に建設された「古賀政男音楽博物館」と、古賀の代表曲「丘を越えて」にちなんで命名されました。

過去の路線

渋谷区役所庁舎の建て替え期間中には、仮庁舎へのアクセスを考慮して、一部のルートで経路変更や停留所の仮設置が行われました。また、区役所を訪れる利用者のために、一部のルート間で乗り継ぎが無料になる措置が取られました。

車両

ハチ公バスの車両には、忠犬ハチ公をモチーフとしたイラストやロゴが描かれています。また、バリアフリーに対応したノンステップバスが導入されています。車両のデザインは、各運行事業者によって若干異なり、ハチ公の表情にも違いが見られます。

現在、日野・ポンチョ（HX系）とEVモーターズ・ジャパン・F8 series4（Mini Bus）が使用されています。過去には、日野・ポンチョ（初代）が使用されていました。

ハチ公バスのうた

「ハチ公バスのうた」は、ミュージシャンの松浦美佳（MIKA）が作詞・作曲し、武内洋子と原宿少年少女合唱団が歌う楽曲です。ハチ公バスの車内放送で使用されているほか、渋谷区内の小学校でも校内放送として使用されています。

まとめ

ハチ公バスは、渋谷区民にとって欠かせない交通手段です。多様なルートが区内を網羅しており、地域の足として重要な役割を果たしています。これからも、より便利で快適な移動手段として、区民に愛され続けるでしょう。

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