代県

代県（だい-けん）は、中華人民共和国山西省忻州市に位置する県です。その歴史は古く、前漢時代に設置された広武県を前身とし、後漢時代には雁門郡の郡治が置かれました。隋代には雁門県と改称され、唐代には代州と呼ばれるようになります。

代県の北に東西に伸びる山地には、万里の長城の重要な関所である雁門関が位置し、古来より中国北方の軍事的な要衝でした。1994年には国家歴史文化名城に指定されています。

歴史

金朝後期にはモンゴルがこの地を占領し、一時的に雁門県は廃止されましたが、明朝成立後に代県として復活。その後、代州への昇格や直隷州への昇格を経て、1912年に再び代県となり、現在に至ります。

代県の地形は山地が多く険しいため、古代中国においては北方からの遊牧民族の侵入を防ぐための軍事要塞としての役割を果たしました。万里の長城と雁門関は、その象徴とも言えるでしょう。李牧、薛仁貴、郭子儀、楊業といった名将たちが代州鎮守として赴任し、二千年の間に百回以上の戦いの舞台となりました。

文化と観光

現在の代県には、数多くの文物や遺跡、古建築が残されています。現存する代州城は明代初期に造られ、当時の城郭都市の基本的な形態を今に伝えています。城内の市街地中央には「辺靖楼」（鼓楼）という大規模な楼閣が位置し、代県のシンボル的存在となっています。辺靖楼は明の洪武2年（1374年）に建てられましたが、後に焼失し、成化12年（1476年）に再建されました。その他にも、阿育王塔、文廟、文昌祠、城隍廟、武廟、慈雲庵などの古い建築物が城内に残っています。また、城外には陽明堡、楊忠武祠、趙杲観などの遺跡や建築があります。

辺境の要塞であった代県には、李白、陳子昂、王昌齢、范仲淹などの文人が多く訪れ、漢詩を詠んでいます。また、民間の伝統工芸としては、剪紙や民画などが知られています。

地理と経済

代県は京原線が通っており、交通の便は比較的良いと言えます。経済は農業と鉱業が中心です。県の中部を東西に流れる滹沱河沿岸には盆地が広がり、土地は比較的肥沃で農業生産に適しています。主要な作物はコムギ、コーリャン、トウモロコシ、アワなどです。特にトウガラシ（辣椒）の生産が盛んで、中国四大産地の一つに数えられています。また、県内には鉄鉱山もいくつか存在し、鉄の含有率が高く、農業を支える重要な産業となっています。

行政区画

代県は以下の鎮と郷から構成されています。

鎮: 上館鎮、陽明堡鎮、峨口鎮、聶営鎮、棗林鎮、峪口鎮、雁門関鎮
郷: 新高郷、上磨坊郷

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