仲みどり

仲みどり：原爆症認定第一号の女優

仲みどり（1909年6月19日 - 1945年8月24日）は、昭和時代に活躍した新劇女優です。彼女は太平洋戦争中に移動演劇桜隊に所属し、広島で被爆しました。医学的に原爆症と認定された最初の患者として、その名前は歴史に刻まれています。

生い立ちと演劇との出会い

仲みどりは、東京の塗料問屋の娘として生まれました。白百合学園中学校・高等学校を中退後、大阪のウヰルミナ女学校を卒業しました。その後、浅草の剣劇団を経て、1931年に築地小劇場内のプロット研究所に入所し、演劇の世界に足を踏み入れました。この頃、彼女は喫茶店「トリオ」を経営し、左翼思想に傾倒したとされています。

新劇女優としての活動と戦争

仲は、劇団東京左翼劇場で新劇女優としてデビュー。その後、映画出演や喫茶店経営、慰問団への参加など様々な活動を行いました。1942年には、苦楽座に参加し、後に移動演劇桜隊に合流しました。桜隊は全国各地を巡業しましたが、1945年8月6日、広島滞在中に原爆投下に見舞われました。

原爆被爆と壮絶な闘病

仲みどりは、原爆投下時、寮の二階にいて被爆しました。裸同然で京橋川まで避難し、救助された後、宇品の臨時救護所に収容されました。しかし、医療体制が整っていない状況に危機感を抱き、東京へ脱出しました。

帰京後、仲は極度の食欲不振や胸の痛みに苦しみ、東京帝国大学附属病院に入院しました。そこには放射線医学の権威である都築正男教授がおり、手厚い看護を受けることができましたが、症状は悪化の一途を辿りました。白血球数が著しく減少するなど、原爆症特有の症状に苦しみましたが、8月24日、静かに息を引き取りました。

原爆症認定と後世への影響

仲みどりの死後、直ちに解剖が行われ、死因は原爆症と特定されました。彼女は医学的に原爆症と認定された最初の患者となり、その病理解剖の結果は、その後の原爆症研究に大きな影響を与えました。

彼女の肺と骨髄の標本は、現在も東京大学病院に保存されており、原爆の恐ろしさを今に伝えています。

2013年には、紛失していたとされる彼女のカルテの一部が発見され、その存在が改めて注目を集めました。

映画化と記憶の継承

仲みどりの被爆体験は、新藤兼人監督の映画『さくら隊散る』で描かれました。この作品は、ドキュメンタリーとドラマを融合させ、原爆の悲劇と、その中で生きた人々の姿を伝えています。

仲みどりの生涯は、原爆の恐ろしさ、戦争の悲惨さを後世に伝える上で重要な意味を持っています。彼女の勇気と、その悲劇的な死は、私たちに平和の大切さを教えてくれます。

参考文献

江津萩枝『櫻隊全滅 ある劇団の原爆殉難記』未來社、1980年
青木笙子『「仲みどり」をさがす旅』河出書房新社、2007年
* 松木秀文・夜久恭裕『黙殺された極秘情報 原爆投下』NHK出版、2012年（新潮文庫、2015年）

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