伊号第六潜水艦

伊号第六潜水艦

伊号第六潜水艦（いごうだいろくせんすいかん）は、大日本帝国海軍の潜水艦です。伊一型潜水艦の6番艦として建造され、艦型は巡潜型または巡潜二型とされていました。

概要

本艦は、ロンドン軍縮条約下における計画に基づき建造された潜水艦で、伊1型潜水艦の改良型です。排水量に大きな変更はありませんでしたが、水上速力向上のため船体の設計が見直されるなどの改良が加えられました。高角砲は、後部甲板に射出機を設置するために1門に減らされ、代わりに機銃が13mm1挺に強化されました。魚雷の搭載数は17本に減少しています。

航空兵装は伊5とほぼ同様で、艦後部に格納筒と射出機1基が新造時から装備されました。しかし、この後甲板から水上機を射出する方式は、射出時に後進する必要があったため、実用性に問題があったとの指摘があります。開戦時には搭乗員が配置されておらず、伊5と同様に射出機が撤去される可能性もありました。

主機には、艦本式ディーゼルが潜水艦として初めて採用されました。また、熱帯地方での行動も考慮されていたと言われています。

艦歴

開戦まで

1931年（昭和6年）の1931年度艦艇補充計画（①計画）で建造が計画されました。1932年10月14日に川崎重工業神戸造船所で起工し、1934年3月31日に進水しました。同年8月25日の公試では21.3ノットを記録し、1935年5月15日に竣工しました。竣工と同時に横須賀鎮守府に所属し、第一艦隊第1潜水戦隊第8潜水隊に編入されました。

1935年8月1日、伊勢湾付近で潜航中に駆逐艦「暁」と衝突し、潜望鏡を損傷したため、横須賀で修理を受けました。同年11月15日、第8潜水隊は横須賀鎮守府部隊隷下となりました。

1936年7月には、九六式小型水上機を試験的に搭載しました。同年12月1日、第8潜水隊は第一艦隊第1潜水戦隊隷下となりました。

1937年8月21日、伊6は伊1、伊2、伊3、伊4、伊5、戦艦長門、陸奥、榛名、霧島、軽巡洋艦五十鈴とともに多度津港を出港し、長江河口沿岸で作戦行動を行いました。

1939年11月15日、第8潜水隊は再び横須賀鎮守府部隊隷下となりました。

1940年には、水上機を降ろし、搭乗員の配置もなくなりました。この際、伊5と同様に射出機が撤去され、艦橋構造物の延長、96式25mm連装機銃1基が艦橋構造物上に搭載された可能性もあります。同年11月15日、第8潜水隊は潜水母艦長鯨、第7潜水隊、伊7とともに第六艦隊第2潜水戦隊の指揮下となりました。

サラトガ撃破

太平洋戦争開戦時には、第六艦隊第2潜水戦隊第8潜水隊に所属していました。1941年11月16日、伊6は横須賀を出港し、真珠湾攻撃ではモロカイ島北方海域に配備されました。12月9日、カウアイ海峡で、空母と重巡2隻、駆逐艦若干からなる機動部隊を視認しましたが、その後、オアフ島南方沖に移動するよう命令を受けました。その後、魚雷の検査中の事故により魚雷員1名が負傷し、魚雷発射管1基が故障しました。12月27日には、負傷していた魚雷員が敗血症で死亡し、水葬に付されました。

1942年1月9日、伊18が発見した米空母レキシントンの捜索に向かい、その後ジョンス[[トン島]]北東沖合に移動しました。翌10日には、米軍機の哨戒機を複数回発見しました。1月11日、ジョンス[[トン島]]北東270浬地点付近を哨戒中、米駆逐艦1隻を発見して急速潜航しました。まもなく、空母エンタープライズと合流するため、15ノットで航行中の米空母サラトガを主力とする第14任務部隊を発見しました。伊6は4200mの距離から魚雷3本を発射し、うち1本がサラトガの左舷中央部に命中しました。これにより、サラトガはボイラー室3つが満水となり、機関兵6名が戦死しました。サラトガの浸水量は1100トンとされ、大きく損傷しました。7分後、護衛の駆逐艦が爆雷攻撃を行いましたが、伊6は深度100mまで潜航してこれを回避しました。伊6では、2回の大きな爆発音、続いて断続的に小さな爆発音を聴取し、船体破壊音と判断しました。2200、伊6は浮上し、レキシントン級空母1隻を撃沈したと報告しました。実際には、サラトガは修理のため6ヶ月間戦線を離脱することになりました。

1月12日、哨戒海域を離れた伊6は、22日にクェゼリンに到着しました。この時、燃料残量は800リットルでした。1月24日、クェゼリンを出港し、2月2日に横須賀に到着して整備を受けました。

インド洋での行動

2月14日、伊6は横須賀を出港し、22日にスターリング湾に到着しました。23日、スターリング湾を出港し、24日にはティモール島西方沖を浮上航走中に、味方機に誤認され機銃掃射を受けました。このため、潜航して回避しました。3月8日にはペナンに到着し、26日にはインド洋へ向けてペナンを出港しました。

3月31日、モルディブ諸島北端付近で敵商船を発見しましたが、病院船であることが判明したため、攻撃を中止しました。4月2日、ボンベイ南西300浬地点付近で、イギリス貨物船クラン・ロスを発見し、魚雷攻撃で撃沈しました。伊6は、生存者を尋問した後、ビスケットを与え、ボンベイに向かうように指示して解放しました。

4月7日には、ボンベイ西方沖でイギリス貨物船バハダールを発見し、魚雷と砲撃で撃沈しました。4月10日には、ボンベイ南西300浬地点付近で帆船2隻を撃沈しました。4月17日、伊6はシンガポールに到着し、21日にシンガポールを出港し、5月1日に横須賀に到着して修理を受けました。

アリューシャン攻略

6月20日、伊6はアリューシャン攻略作戦の支援のため横須賀を出港しました。7月29日、東港海軍航空隊所属の九七式飛行艇がアトカ島を偵察し、米水上機母艦が停泊中であることを報告しましたが、伊6は発見できませんでした。その後キスカ島に到着しました。

8月7日、米艦隊がキスカ島の砲撃を行ったため、一旦潜航して回避し、その後上陸中の乗員を呼び戻してから米艦隊を追跡しました。8月17日、キスカを出港し、23日に横須賀に戻り、大発を搭載可能なように改装されました。帰投中の8月20日、第2潜水戦隊の解隊と同時に第8潜水隊も解隊され、伊6は第六艦隊第7潜水隊に編入されました。

機雷敷設・輸送任務

1943年2月16日、伊6は大発1隻を乗せて横須賀を出港し、トラック島に到着しました。その後、弾薬と燃料の補給を受け、大発を降ろしました。3月2日、トラックを出港し、3月13日にはブライビー島北方海域に機雷を敷設しました。また、輸送船団を発見し、魚雷攻撃を行うも失敗。その後、哨戒中にアメリカのリバティ船チャールズ・C・ジョーンズを攻撃するも、失敗に終わりました。

その後、ラバウルに到着。ラエへの輸送任務に9回従事し、兵器、弾薬、食糧、人員などを輸送しました。輸送任務中は、米魚雷艇や哨戒機との遭遇も経験しました。

5月13日には、ラエ沖で米魚雷艇に発見され、魚雷攻撃を受けましたが、回避に成功しました。その後、味方機搭乗員の救助を行い、ラバウルへ移動しました。

アリューシャン方面での行動

7月2日、伊6はキスカ島撤退作戦に参加するため横須賀を出港し、キスカ島北北東沖合を哨戒しました。8月4日、幌筵に到着。16日、幌筵を出港してキスカ島方面に進出し、9月3日に幌筵に到着。5日に幌筵を出港し、10日に横須賀に到着して修理を受けました。

南東方面での行動

10月30日、伊6は横須賀を出港し、ラバウルに寄港しました。その後、シオへの輸送任務に4回従事しました。3回目の輸送任務では、揚陸中に米軍機の空爆を受け、若干の荷物を艦内に残したまま帰投しました。4回目の輸送任務では、任務を終えて帰投中に米魚雷艇や米軍機の攻撃を受けましたが、損害を受けることなく帰投しました。また、グロスター岬付近で敵輸送船団を発見。ダンピア海峡で哨戒を行った後、ラバウルに戻りました。

その後も、ニューブリテン島イボキへの輸送任務などに従事しました。1944年2月には、暗礁に触れて推進器を損傷するトラブルもありました。

1944年6月16日、伊6はサイパン島に向かうべく横須賀を出港したのを最後に消息不明となり、7月13日にサイパン方面で沈没したものと認定され、1944年9月10日に除籍されました。沈没原因は不明で、艦長以下乗員104名全員が戦死認定されました。

撃沈総数は4隻で、撃沈トン数は11,621トン。撃破総数は1隻で、撃破トン数は49,552トンでした。

略歴

1935年5月15日：神戸川崎造船所にて竣工、横須賀鎮守府籍
1940年11月15日：第6艦隊第2潜水戦隊第8潜水隊に編入
1941年11月16日：横須賀出港、ハワイ作戦に参加
1942年1月12日：ハワイ南西で米空母サラトガを雷撃、魚雷1本命中
2月14日：横須賀出港、ジャワ、インド洋方面へ進出。ボンベク沖で貨物船2隻撃沈。
6月20日：横須賀出港、アリューシャン方面へ進出
1943年2月26日：横須賀出港、豪州東岸にて機雷敷設
4月4日：ラバウル出港、ラエへの輸送任務を以後9回
7月1日：横須賀出港、キスカ島撤退作戦支援
10月30日：横須賀出港、ラバウルに進出して輸送任務に従事
1944年6月16日：横須賀出港、サイパンへ向かうも、消息不明。
7月1日：伊6へ向けて打電がされるも、応答はなかった。
7月13日：同日沈没認定。104名全員戦死認定
9月10日：除籍

潜水隊の変遷

伊6は、横須賀鎮守府籍の伊4、伊5とともに第8潜水隊を編成しました。太平洋戦争では、ハワイ、アリューシャン、インド洋で哨戒や輸送任務に従事しました。

第八潜水隊

1930年8月1日：伊3、伊4で編成。横須賀鎮守府部隊
1930年12月1日：第一艦隊第1潜水戦隊
1932年7月31日：竣工した伊5を編入
1935年5月15日：竣工した伊6を編入
1940年11月15日：伊3が第7潜水隊に転出。第六艦隊第2潜水戦隊
1942年8月20日：解隊。所属艦は第7潜水隊に編入

歴代艦長

貴島盛次 少佐：1934年8月25日 - 1935年5月25日
長井武夫 少佐：1935年5月25日 - 1936年12月1日
岡田有作 中佐：1936年12月1日 - 1937年11月15日
大山豊次郎 少佐：1937年11月15日 - 1939年11月1日
永井宏明 中佐：1939年11月1日 - 1940年10月30日
楢原省吾 中佐：1940年10月30日 - 1941年1月31日
稲葉通宗 少佐：1941年1月31日 -
中村省三 少佐：1942年5月23日 -
井筒紋四郎 少佐：1942年12月15日 -
下瀬吉郎 少佐：1943年5月20日 -
篠原茂夫 大尉：1944年4月30日 -
普門正三 少佐：1944年5月27日 - 7月13日戦死認定

脚注

[参考文献]
雑誌「丸」編集部『写真 日本の軍艦 第12巻 潜水艦』（光人社、1990年） ISBN 4-7698-0462-8
* 外山操『艦長たちの軍艦史』（光人社、2005年） ISBN 4-7698-1246-9

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