大森城

大森城：臥牛城の歴史と今

大森城は、福島県福島市南部に位置する戦国時代の日本の城で、別名、臥牛城とも呼ばれています。JR南福島駅から西へ約2kmの場所に位置し、現在は城山公園として整備され、市民の憩いの場、そして福島有数の桜の名所として親しまれています。

大森城の概要

大森城は、福島市大森の小高い丘陵の先端部に築かれました。標高は147メートル、比高差は60メートルと、それほど高い城ではありません。公園として整備された現在、北端には櫓の形をした展望台が設置され、大森城址を一望できます。

歴史

大森城がいつ頃から存在したのかは定かではありません。しかし、城跡周辺には鎌倉時代から室町時代初期にかけての板碑が数多く残されており、この地域が有力な国人の拠点であったことがうかがえます。鎌倉時代から室町時代初期にかけては、二階堂氏がこの一帯を支配していました。

大森城が史料に登場するのは戦国時代からです。伊達稙宗の三男である伊達実元が城主となり、伊達氏の内紛である天文の乱の際には、実元は稙宗方につき、大森城は稙宗方の重要な拠点となりました。乱の終結後、実元は兄である晴宗と和解し、大森城主として信夫郡南部の支配権を与えられます。その後、実元は嫡男・成実に城を譲り、自身は八丁目城に隠居しました。

成実は伊達政宗の片腕として活躍し、政宗が二本松城を落城させると、成実に二本松城を与え、大森城は片倉景綱に与えられました。この時期の大森城は、政宗による仙道地方進出や相馬氏との戦いにおいて、中継拠点として重要な役割を果たし、伊達氏の南奥制覇に大きく貢献しました。

豊臣秀吉による奥州仕置によって信夫郡が伊達氏から没収されると、大森城は蒲生氏郷の客将である木村吉清に与えられます。吉清は杉妻城を改修して福島城と名を変え、居城を移したため、大森城は廃城となりました。現在の福島市の名前は、この時に由来します。

蒲生氏の後に上杉景勝が会津領主となると、大森城は再び取り立てられ、上杉氏家臣の栗田国時が城主となりました。関ヶ原の戦いの直前に国時が徳川家康に通じたために殺害されると、芋川正親が城主となります。その後、大森城は芋川氏に代々受け継がれましたが、寛文4年（1644年）に上杉領が15万石に半減されると、信夫郡は天領となり、大森城は完全に廃城となりました。

構造と現状

大森城は、最高地点を中心とした主郭（本丸）、北端の北館、主郭南にある南館という、北から南に向かって配置された比較的規模の大きい３つの郭を中心とした構造でした。主郭部分も北半分と南半分では段差があり、北側の高い場所が城主の館であったと考えられます。主郭の南側には空堀と土塁が残っています。

現在、城跡は公園化によって改変されていますが、南館は雑木林と畑作地として遺構が残っています。北東部分の帯郭の入り組みからは、虎口が存在したことが推察できます。北館部分は現在、主郭から展望台にかけて緩やかな傾斜地となっています。

信夫公民館裏から城山観音堂を経由して北舘まで登る道は、大手口であったと考えられています。また、北舘の麓の民家の道路側に残る水路は、大森城の水堀の名残であると言われています。平成5年（1993年）には、展望台の建設にあたり北舘北端部が発掘調査され、16世紀に比定される瀬戸産の陶磁器が出土しました。

城下町と周辺の中世史跡

城下町は大森城の東山麓に形成され、現在の大森市街地の原型となっています。土手内や馬場という地名が残る信夫公民館周辺が武家屋敷地、本町などの県道水原線に沿った地域が町人街であったと考えられています。16世紀まで奥州街道は大森を経由しており、大森は米沢へ向かう街道と北へ向かう街道との分岐点でもありました。

大森城のある南福島地域は、中世史跡の宝庫として知られています。大森城の西方にある陽泉寺には、国の史跡に指定されている「下鳥渡供養石塔」と呼ばれる鎌倉時代後期の板碑があります。また、城より南にある陽林寺は伊達氏の庇護を受けており、伊達家文書や伊達実元の墓が残されています。

大森城山公園

現在、山頂部は大森城山公園として整備され、福島市役所公園緑地課によって管理されています。約700本の桜が植えられており、春にはさくら祭りが開催され、多くの人々で賑わいます。公園内にはキャンプ場も設置されており、炊事場などの設備も整っています。

大森城は、戦国時代の歴史を今に伝える貴重な史跡であり、市民の憩いの場、そして桜の名所として、これからも大切にされていくことでしょう。

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