会いたい (沢田知可子の曲)

沢田知可子「会いたい」の詳細解説

「会いたい」は、沢田知可子が1990年6月27日にリリースした8枚目のシングルで、彼女の最大のヒット曲です。この曲は、4枚目のアルバム『I miss you』からシングルカットされ、ミリオンセラーを達成しました。1991年には『第24回全日本有線放送大賞』でグランプリを受賞し、『第42回NHK紅白歌合戦』にも出場するなど、社会現象を巻き起こしました。

曲の背景

この曲は、亡くなった恋人を想い、過去の思い出を回想しながら会いたい気持ちを募らせるという内容です。沢田知可子自身も、この歌詞に運命的なものを感じたと言います。彼女が学生時代に歌手になる決意をバスケット部の先輩に告げた際、「俺が最初のファンになる」と言ってくれたものの、数日後に交通事故で亡くなってしまうという悲しい出来事がありました。このエピソードが曲の内容と重なるところがあり、より深く感情移入できたと語っています。ただし、作詞を担当した沢ちひろは、このエピソードを全く知らずに作詞したとされています。沢は、幼少期に亡くなった母親との思い出から着想を得て、独自のストーリーを歌詞にしたそうです。そのため、死を直接的に表現した歌詞になったとされています。

カップリング曲の「Silent Rain」も、同じく『I miss you』からのシングルカットです。

作曲は財津和夫が担当しましたが、実際には彼が提出したデモテープの鼻歌程度のメロディーを元に、編曲を担当した芳野藤丸がほぼ全面的に曲を完成させたそうです。この曲は、財津の作品の中で最大の売り上げを記録しています。

収録曲

1. 会いたい [4:53]
作詞：沢ちひろ
作曲：財津和夫
編曲：芳野藤丸
テレビ朝日『トゥナイト』エンディングテーマ
日本製粉（現・ニップン）CMソング
2. Silent Rain [4:59]
作詞：渡辺なつみ
作曲：沢田知可子
編曲：岩本正樹

主なカバー

「会いたい」は、多くのアーティストによってカバーされています。以下はその一部です。

杏里
石川さゆり
岩崎宏美
エリック・マーティン
城南海
小柳ゆき
坂本冬美
Acid Black Cherry|Acid_Black_Cherry
徳永英明
Tiara
Ms.OOJA
マリリン・マーティン
yu-yu
キム・ジョンフン
桑田佳祐
財津和夫（セルフカバー）

訴訟騒動

2014年12月、作詞を担当した沢ちひろが、著作者人格権を侵害されたとして沢田知可子を訴えるという騒動が起こりました。この訴訟は、沢田がアルバム『Sing with Me -episode 1-』で「会いたい」を男性ボーカルグループ「INSPi」とデュエット形式で再歌唱した際、タイトルを「会いたい～with INSPi」としたこと、歌詞カードにない冒頭部分で沢田が「アイム・イン・ラブ・ウイズ・ユー」と歌ったことが、歌詞の改変にあたると沢側が主張したことが発端です。

この訴訟に対し、弁理士の栗原潔は、沢が過去に「会いたい」の歌詞について、沢田自身の体験談のように説明したこと、テレビ番組で替え歌を歌ったこと、英語詞を追加してタイトルを変更したバージョンを販売したことなどが関連しているのではないかとの見解を示しました。沢はテレビ朝日の取材に対し、作詞家の権利を守るために提訴したと語りましたが、その後は歌わせないつもりだと主張しました。

一方、沢田側はアルバム収録曲のタイトルは一緒に歌っているグループ名を指すものであり、歌詞カードにない部分は歌詞ではなくナレーションのようなものだと主張し、請求の棄却を求めました。しかし、ヤマハ側は楽曲をめぐる周辺への配慮から、アルバムの販売を一時中止し、「会いたい」を除いた形で再販しました。

訴訟が続く中で、沢田は沢に対し謝罪の気持ちを抱くようになり、「会いたい」を歌い続けることでしか、彼女への思いを返せないと考えるようになりました。その後、沢から沢田に連絡があり、2人は和解。訴訟は取り下げられました。

和解から約半年後、沢ちひろは心不全で急逝しました。沢の遺族から、生前に2人が制作していた未発表曲「冬のほたる」について、沢田に歌ってほしいという依頼があり、沢田は2017年に同曲をアルバムに収録しました。

沢田は、この曲を通して、沢への謝罪と感謝の思いを伝えています。また、かつて嘉門タツオから替え歌の提案があった際、沢が「大ヒットしているから今は止めてほしい」と伝えたというエピソードも残っています。

脚注

関連項目
冬歌2 - 冬の楽曲を集めたコンピレーション・アルバム。
銀色の雨 - 2009年公開の映画で、「会いたい」が挿入歌として使用された。
世にも奇妙な物語 - 『カラオケBOX』のストーリーの核に使われた。
おふくろさん騒動 - 同様のケースによる作詞家と歌手間のトラブル。
森のくまさん (曲) - 同上。但しこちらは替え歌として発表されたシングル曲に対してのもの。


このように、「会いたい」は、数々のドラマとエピソードに彩られた、沢田知可子にとって特別な一曲と言えるでしょう。

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