住用村

住用村（すみようそん）とは

住用村は、かつて鹿児島県奄美大島に存在した村で、大島郡に属していました。2006年3月20日に名瀬市、笠利町と合併し、奄美市の一部となり、現在は奄美市の地域自治区である住用町となっています。住用村は、その豊かな自然と歴史、そして地域の人々の生活と密接に結びついた文化が特徴です。

地理

住用村は、奄美大島の南部に位置し、島の南東部にある住用湾に面していました。村の面積の約85%は険しい山岳地帯で、金川岳（528m）やタカバチ山（485m）などの山々が連なっています。これらの山々には、スダジイなどの樹木が茂り、リュウキュウイノシシ、アマミノクロウサギ、ケネガネズミ、ルリカケスなど、多様な野生動物が生息しています。また、林業のためにスギ、ヒノキ、モクマオウなどが植林されていました。

住用川は、村を流れる主要な河川であり、リュウキュウアユやモクズガニなどが生息しています。住用川の流域には、西表島に次ぐ規模のマングローブ林が広がっており、独特の生態系を形成しています。また、トビラ島（とぅぶら島）やトンバラ岩などの島嶼、岩礁が海岸線に点在しています。

歴史

古代

縄文時代以降、城字池平の通称「サモト」と呼ばれる場所に人が居住していたことが、サモト遺跡の発掘（1982年）によって確認されています。

中世

16世紀には、琉球王国の住用間切となり、薩摩藩の直轄領となった後もその体制は続きました。その後、金久（後の城）などの北部は須垂方（すたるほう）、山間などの南部は住用方（すみようほう）と、地域が分けられました。

近現代

1875年、西仲間に郵便取扱所が開設されました。1887年には、須垂方戸長役場と住用方戸長役場が統合され、西仲間に戸長役場が開設されました。初代戸長には憲正興が就任しました。1908年4月1日、島嶼町村制の施行により、住用間切全域を以て大島郡住用村が発足しました。この時、12の村から構成され、各村に区長が置かれました。1920年4月1日には、普通町村制の住用村となりました。1929年には、名瀬との間に電話線が開通しました。第二次世界大戦中の1945年7月から8月にかけて、アメリカ軍の空襲により154戸が焼失する被害を受けました。1946年2月28日、アメリカ合衆国（琉球列島米国民政府）の統治下に置かれましたが、1953年12月25日に奄美大島が日本に返還されたことにより、再び日本国に属することとなりました。1961年9月15日には、第二室戸台風の襲来により村内全域が被災し、1964年8月20日には、台風14号の襲来によって住用川、役勝川が氾濫し、318戸が浸水する被害を受けました。1969年10月22日には、戸玉に共栄木材のチップ工場が完成しましたが、1995年に閉鎖されました。1989年1月には、国道58号線三太郎トンネルが開通し、同年9月16日にはバイパスが開通しました。2000年12月には、国道58号線小和瀬トンネルが開通しました。そして、2006年3月20日、名瀬市、笠利町と合併し、奄美市となり、奄美市の地域自治区「住用町」となりました（設置期間は2016年3月31日まで）。

行政

合併前の住用村の最後の村長は、師玉當章（しだま とうしょう）氏でした。

産業

1995年の木材チップ工場の閉鎖以降、大きな事業所は存在しません。2000年の国勢調査では、建設業に従事する人が最も多くなっています。農業では、ポンカン（島内最初で1941年より栽培）、タンカン、パッションフルーツなどが主な農産品として生産されています。漁業では、カマスサワラ、モズク、モクズガニなどが水揚げされています。また、林業も行われています。

自然

住用村には、日本で2番目に広いとされる住用マングローブ林が広がっています。このマングローブ林は、主に住用川と役勝川の河口域に分布しており、メヒルギとオヒルギの2種類の樹木で構成されています。住用はオヒルギの北限となっており、その生態系は非常に貴重です。マングローブ林には、チゴガニやフタバカクガニ、ユビアカベンケイガニなどが生息し、干潟部ではオキナワハクセンシオマネキ、ツノメチゴガニ、コメツキガニなどが見られます。また、準絶滅危惧種のカタシイノミミミガイやシマカノコガイなどの希少種も確認されています。さらに、オキナワアナジャコなどの分類特性上重要な種も生息しています。1991年以前は、住用マングローブ林は子どもたちの遊び場であり、ガサミ（ワタリガニ）を素手で捕まえたり、キス釣り大会が行われたりしていました。しかし、1991年以降、奄美群島観光施設整備事業によって、住用マングローブ林は観光地となり、カヌー体験などを通して自然と触れ合うことができるようになりました。

地域

住用村には、石原、市、神屋、川内、城、摺勝、西仲間、東仲間、見里、役勝、山間、和瀬などの集落があります。

教育

住用村には、住用中学校、市小中学校、東城小中学校、住用小学校などの小中学校がありました。和瀬分校は廃校となっています。

交通

最寄りの空港は奄美空港、最寄りの港は名瀬港と古仁屋港です。バス路線は、道の島交通（現しまバス）が運行しています。道路は、国道58号と鹿児島県道608号湯湾新村線が整備されています。また、道の駅「奄美大島住用」も設置されています。

名所・旧跡・観光スポット

住用村には、黒潮の森マングローブパーク、新住用川ダム、石原ヨシハラウエノ遺跡、タンギョの滝、フナンギョ（船之行）の滝、野茶坊岩屋などの名所・旧跡・観光スポットがあります。

住用村に関わりのある人物

畠中三太郎は、川辺町出身の農業指導員で、1912年から1932年まで夫婦で峠の茶屋を営み、三太郎峠の名前の由来となりました。石原省三は、元住用村村長（第10代）であり、村の産業振興、医療などに貢献しました。

その他

住用村は、自然と歴史が豊かな地域であり、マングローブ林や多様な動植物が生息しています。また、地域の人々の生活と密接に結びついた文化や産業も育まれてきました。現在では、奄美市の一部として、その歴史と文化を受け継ぎながら、新たな発展を目指しています。

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