何鍵

何鍵（かけん）

何鍵は、中華民国の軍人であり、湘軍（湖南軍）に所属していました。後に武漢国民政府の有力な軍指揮官となりましたが、上海クーデター後に蔣介石を支持し、湖南省を長期にわたって統治しました。しかし、西安事件での対応を蔣介石に猜疑され、失脚しました。字は芸樵（うんしょう）。号は容園。

事績

湘軍での台頭

富農の家庭に生まれ、1906年から崇古学堂、湖南公立法政学堂で学びました。辛亥革命後、文官となりましたが、すぐに軍人の道へ転じます。湖北陸軍第三中学、保定陸軍軍官学校第3期歩兵科で学び、1916年に卒業後、湘軍に加入しました。

1921年頃から、何鍵は湘軍第1師第1旅旅長の唐生智配下となり、騎兵団長に起用されました。1923年8月の「譚趙之戦」では、唐生智に従って北京政府側の湖南省長・趙恒惕に味方し、南方政府側の譚延闓と戦いました。趙恒惕が勝利すると、唐生智は第4師師長に昇進し、何鍵も同師第9旅旅長となりました。

1926年3月、唐生智と何鍵は中国国民党と結んで蜂起し、趙恒惕を駆逐しました。7月に広州国民政府が北伐を開始すると、唐生智と何鍵は中国国民党と国民革命軍に加入し、唐生智は第8軍軍長、何鍵は同軍第1師師長に任ぜられました。唐生智率いる第8軍は武漢攻略に貢献し、河南省まで進軍しました。これにより、唐生智と何鍵は、汪兆銘首班の武漢国民政府において軍事力を擁する有力者となりました。

1927年4月12日に上海クーデターが起きると、かねてから農民運動に反感を抱いていた唐生智と何鍵は蔣介石を支持しました。翌月以降、何鍵は湖南省や湖北省で共産党弾圧を開始し、汪兆銘と蔣介石の合流を促すことになります。

湖南省統治

汪兆銘と蔣介石が合流した後の11月、唐生智は反蔣介石の動きを見せたために、新広西派（新桂系）の攻撃を受け、下野に追い込まれました。これ以後、何鍵は唐生智配下から離脱し、新桂系支持に転じて湖南全省清郷督弁に任じられました。まもなく新広西派と蔣介石の対立が深まると、何鍵は今度は蔣介石に接近を図るようになります。

1929年3月、何鍵は蔣介石から湖南省政府主席に任ぜられました。さらに同月に勃発した蔣桂戦争では、討逆軍第4軍軍長に任ぜられ、広西省へ進攻して蔣介石派の勝利に貢献しました。その後も何鍵は蔣介石を支持し、反蔣介石派との戦いにも参戦しました。しかし1930年には、新広西派と紅軍により、それぞれ1度ずつ省都・長沙を失陥させられるという憂き目にも遭っています。このときは、蔣介石の支持を受けたため辛うじて求心力を確保し、何とか長沙を奪還しました。これ以後も、何鍵は共産党粛清や中国共産党掃討作戦に度々参加し、1929年には朱徳の妻である伍若蘭、1930年には毛沢東の妻である楊開慧を処刑しています。

何鍵は湖南省政府主席に就任してから8年余りにわたり湖南省を統治し、10万人規模の軍勢を抱える実力者となりました。しかし1936年の両広事変や西安事件において、それぞれの反蔣介石派とも結んだ動きを見せたため、蔣介石に猜疑され、翌年11月に湖南省政府主席から罷免され、内政部長へ異動させられました。さらに湖南の軍を率いていた腹心・劉建緒も、第4路軍総指揮に任命されて江蘇・浙江方面へ赴くことになりました。

失脚後の不振

上官だった程潜や唐生智、部下の劉建緒らとは異なり、日中戦争勃発後も蔣介石から軍指揮権を与えられることは全くありませんでした。1939年5月に内政部長を罷免されると、軍事委員会撫恤委員会主任委員という閑職に移されるほどの冷遇を受けました。1945年5月、中国国民党第6期中央執行委員に選出されたものの、日中戦争終結直後に病気を理由に辞職し、故郷に隠棲して完全に政界から身を引きました。国共内戦末期には、香港を経由して台湾に逃れ、総統府国策顧問に任ぜられました。1956年4月25日、台北市にて脳溢血により死去しました。享年70歳（満69歳）。

著作

『大同與小康』
『八道衍義』

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