余市岳

余市岳：札幌の最高峰とその登山ルート

北海道札幌市の最高峰として君臨する余市岳(標高1488メートル)は、札幌市南区定山渓と余市郡赤井川村にまたがる雄大な山です。羊蹄山、狩場山に次ぐ道南屈指の高峰であり、近隣の朝里岳、白井岳とともに「余市三山」と呼ばれています。

山名の由来と地形・地質

山名は、余市川の源流が岳にあることに由来しています。言語学者山田秀三氏の研究によると、「余市」はアイヌ語の「ユオヲチ（温泉のあるところ）」または「イオチ（蛇の多くいるところ）」に起源を持つとされています。

余市岳は第四紀更新世に活動した火山で、朝里岳火山よりも新しい時代の火山活動によって形成されたと考えられています。標高1000メートル以上の山頂部には火山活動の痕跡が残り、山体の下部には熱水変質を受けた安山岩が広がっています。朝里岳から続く山頂緩斜面は、余市岳付近で東側が大きく崩落したため、幅が狭くなっているのが特徴です。余市岳は、赤井川村側に流れる余市川と、札幌市側に流れる右股川の分水嶺となっています。右股川周辺には、地すべりによって形成された沼や湿地帯が広がっています。

登山ルートの歴史と現状

北海道で比較的初期から登山が盛んに行われてきた山の一つで、1920年にはスキー登山による初登頂が記録されています。当初は北側の赤井川村側から登られることが多かったようです。1927年にはヘルヴェチア・ヒュッテが建設され、余市三山の登山拠点として利用されましたが、長らく静かな山域として知られてきました。しかし、1980年代以降の周辺開発、特にキロロリゾートの開業により、余市岳を取り巻く環境は大きく変化しました。

多様な登山ルート

現在、余市岳には主に3つの登山ルートがあります。

1. ゴンドラコース

キロロリゾートの朝里岳パノラマゴンドラが運行している期間は、ゴンドラ山頂駅（標高1185メートル）から登山を開始できます。山頂駅からやや分かりづらい位置にある登山口から、深い雨裂の刻まれた登山道を進みます。笹の生い茂る道は視界が悪いため、500メートル毎に設置された標識が頼りになります。途中、旧展望台（「飛行場」と呼ばれる平坦地）を通過し、赤井川コースと合流。その後、余市岳北東コルを経て白井川右股コースと合流、山頂へと至ります。山頂直下はハイマツ帯となり、傾斜が緩やかになります。ケルンと観音像のある地点は山頂ではなく、そこからさらに南西へ500メートル進むと真の山頂です。

2. 赤井川コース

キロロリゾートのシェラトンホテル付近にある林道ゲートから、林道を約1時間歩いた地点が登山口です。余市川の源流となる沢沿いの荒れた道を進み、急斜面を登り詰め、ハイマツ帯でゴンドラコースと合流します。

3. 白井川右股コース

札幌市側の登山ルートです。定山渓温泉から右股橋を渡った地点にある「天狗小屋」からスタートします。林道を進み、草の茂る林道跡を辿ります。焼失した白井小屋跡を通過し、前半は古い造林道のため、分岐が多く、湿地帯も多いので注意が必要です。932メートルコル付近からは針葉樹とダケカンバの林となり、沢を2本越えて余市岳北東コルから赤井川コースと合流します。

白井小屋

かつて定山渓奥深くにあった白井小屋は、札幌医科大学の管理下にあった山小屋でした。冬季はスキーを利用してアクセスする難ルートでしたが、夏道の開削により利用者は増加しました。2013年の焼失により、現在は痕跡程度しか残っていません。

まとめ

余市岳は、豊かな自然と歴史を秘めた魅力的な山です。多様な登山ルートがあり、体力や経験に合わせて選ぶことができます。登山計画を立て、安全に登山を楽しんでください。ただし、コースによっては整備が不十分な部分もあるので、最新の登山情報を入手し、十分に準備をしてから登山に臨むことが大切です。

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