倭国造

倭国造（やまとのくにのみやつこ/やまとこくぞう）

概要

倭国造は、古代日本において、後の大和国の中央部にあたる地域を支配したとされる国造です。大倭国造、または大和国造とも表記されます。

表記

『古事記』や『日本書紀』では「倭国造」と記され、『先代旧事本紀』の「国造本紀」では「大倭国造」と表記されています。

祖先

『古事記』によると、若御毛沼命が吉備国の高嶋宮を出発後、速吸門で出会った国津神、槁根津日子が倭国造に任命されたとされます。この人物は水先案内や献策を行ったとされています。

一方、『日本書紀』では、日向を出発した直後に出会った椎根津彦（珍彦）が、神武東征における功績により、神武天皇2年に初めて倭国造に任じられたと記されています。

また、『先代旧事本紀』の「国造本紀」では、彦火々出見尊の孫である椎根津彦命が、大倭国で水先案内を行った後に、大倭国造に任命されたとされています。

これらの記述には若干の差異が見られますが、いずれも倭国造の祖先が神武天皇の東征に深く関わった人物であったことを示唆しています。

氏族

倭国造は、倭氏（やまとうじ、姓は直）という氏族が代々務めました。国名の変遷に伴い、氏族名も大倭氏（おおやまとうじ）、大養徳氏、大和氏などと変化しました。

天武天皇10年（681年）には、倭竜麻呂が連姓に改め、その後、一族が連となり、さらに忌寸姓へと昇格しました。奈良時代には、大和長岡と水守が宿禰の姓を賜っています。

倭氏の遠祖である椎根津彦は、伝承によれば彦火火出見命の子孫とされています。また、久比岐国造や青海氏、明石国造なども倭氏の後裔とされています。

なお、和氏は百済の国王・武寧王の子孫とされており、倭氏とは別系統です。

本拠地

倭国造の本拠地は、穴磯邑大市長岡岬（現在の大和神社旧社地）であると考えられています。

支配領域

倭国造の支配領域は、当時の倭国と呼ばれていた地域であり、後の大和国城下郡大和郷、現在の奈良県天理市周辺にあたります。6世紀から7世紀にかけては、磯城・十市地方（奈良盆地東部）も支配下に置いていたとされています。

氏神

倭国造の氏神は、大和坐大国魂神社（やまとにますおおくにたまじんじゃ、通称：大和神社）です。または、大和大国魂神社とも呼ばれます。

この神社は、当初、皇女の渟名城入姫が斎主として祭祀を執り行っていましたが、体調を崩し祭祀を続けられなくなったため、倭迹迹日百襲媛命が夢で得た神託により、市磯長尾市が新たに祭主として迎えられ、神社が創建されました。

墓

倭国造に関係する古墳として、以下のものが知られています。

中山大塚古墳: 古墳時代初頭に築造された前方後円墳で、被葬者として御物宿禰が想定されています。
波多子塚古墳: 古墳時代前期に築造された前方後方墳で、被葬者として市磯長尾市が想定されています。
下池山古墳: 古墳時代前期に築造された前方後方墳で、被葬者として五十野宿禰が想定されています。

これらの古墳は、倭国造の勢力や権力を示す重要な資料となっています。

人物

倭国造に関わる主な人物として、以下の者が挙げられます。

御物宿禰（みもののすくね）: 古墳時代の人物で、崇神朝の国造。椎根津彦の5世孫とされています。
市磯長尾市（いちしのながおち）: 古墳時代の人物で、垂仁朝の国造。大和大国魂神社の祭主としても知られています。
倭吾子籠（やまとのあごこ）: 古墳時代の人物で、仁徳朝から雄略朝にかけての国造。皇位継承争いに巻き込まれ、命を狙われましたが、妹の日之媛を采女として献上することで助命されました。この出来事以降、倭氏が大王家に采女を献上することが恒例となりました。
手彦直（てひこのあたい）: 古墳時代の将軍で、欽明朝の国造。対新羅戦で活躍しました。

子孫

倭国造の子孫として、以下の者が知られています。

大倭五百足
大和長岡: 奈良時代の法律家。『養老律令』の撰定に関与しました。初名は大倭忌寸小東人で、後に大倭宿禰、大養徳宿禰、再び大倭宿禰を経て、大和宿禰長岡と改名しました。官職を歴任し、大和国造、正四位下に至りました。
大和舘子: 仁明朝の掌侍。朝臣姓を賜り、後に典侍・従四位上となりました。

系譜

(省略)

脚注

(省略)

関連項目

大和大国魂神社
国造の一覧
籠神社
倭迹迹日百襲媛命

出典

武光誠『古事記・日本書紀を知る事典』東京堂出版、1999年9月。ISBN 4-490-10526-6

参考文献

『國史大辭典』 吉川弘文館
坂本太郎・平野邦雄 『日本古代氏族人名辞典』 吉川弘文館
『日本史広辞典』 山川出版社
『神道大辞典』 臨川書店

外部リンク

日本の苗字7000傑 姓氏類別大観 大倭国造

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