大和長岡

大和長岡（やまと の ながおか）は、奈良時代に活躍した貴族であり、法律の専門家である明法家としても知られています。初めは小東人（こあずまひと）と名乗り、後に忌寸（いみき）の姓を経て、最終的に宿禰（すくね）を賜りました。官位は正四位下、大和国造にまで昇りつめています。

若い頃から刑罰や法律に関する学問を好み、文章作成にも長けていた長岡は、霊亀2年（716年）に遣唐使の一員として唐へ渡りました。この際、以前から疑問視されていた多くの事項を解明したとされ、帰国後には法律を学ぶ人々がこぞって長岡に教えを請うたと言われています。養老6年（722年）には、『養老令』の撰定に貢献した功績により、功田4町を与えられました。

天平9年（737年）には、神の託宣があったとして、一族の水守（みずもり）と共に宿禰姓を賜り、他の同族は連姓に改姓しました。同時に、正六位上から外従五位下に昇叙し、絁20疋も授けられています。翌天平10年（738年）には刑部少輔に任ぜられ、官僚としてのキャリアを積み重ねていきました。しかし、天平13年（741年）には藤原広嗣の乱に連座し流罪となりますが、後に赦免されたようです。天平16年（744年）には西海道巡察使次官、天平18年（746年）には摂津亮と役職を歴任し、天平19年（747年）には従五位下に叙されています。

孝謙朝から淳仁朝にかけても、長岡は順調に昇進を重ね、天平勝宝2年（750年）には従五位上、天平勝宝3年（751年）には正五位下、天平勝宝9歳（757年）には正五位上へと進みました。さらに、駿河守、紫微大忠、民部大輔、左京大夫、河内守といった要職を歴任しました。しかし、地方官としての政治手腕は必ずしも優れていたとは言えず、部下の官人や民衆を苦しめたという逸話も残っています。天平宝字8年（764年）には右京大夫に任ぜられましたが、高齢を理由に辞任しました。

神護景雲2年（768年）の賀正の宴では、称徳天皇の詔により特別に昇殿を許されました。この時、長岡は80歳という高齢にも関わらず、豊かな髪を保ち、所作も全く作法を違えることがなかったため、天皇は驚き、自ら位記を書いて正四位下に昇叙しました。翌神護景雲3年（769年）10月29日、長岡は81歳で生涯を終えました。最終的な官位は大和国造正四位下でした。

また、長岡は、神護景雲3年（769年）に制定され、延暦10年（791年）に施行された刪定律令24条の撰者の一人としても名を連ねており、吉備真備と共にその業績が伝えられています。

長岡の官歴は以下の通りです。

時期不詳：従七位上
養老6年（722年）2月27日：功田4町
時期不詳：正六位上
天平9年（737年）11月22日：忌寸から宿禰に改姓、外従五位下、絁20疋
天平10年（738年）閏7月7日：刑部少輔
天平13年（741年）正月22日：流罪（藤原広嗣の乱連座）
天平16年（744年）9月15日：西海道巡察使次官
天平18年（746年）4月：摂津亮
天平19年（747年）正月20日：従五位下（内位）
天平21年（749年）2月27日：摂津亮
天平勝宝2年（750年）正月16日：従五位上
天平勝宝3年（751年）正月25日：正五位下
天平勝宝5年（753年）4月22日：駿河守
天平勝宝9歳（757年）5月20日：正五位上。6月16日：紫微大忠。日付不詳：小東人から長岡に改名
時期不詳：民部大輔
天平宝字3年（759年）5月17日：左京大夫
天平宝字4年（760年）日付不詳：河内守
天平宝字7年（763年）正月9日：従四位下
天平宝字8年（764年）日付不詳：右京大夫
神護景雲2年（768年）正月1日：正四位下（越階）
神護景雲3年（769年）10月29日：卒去（大和国造正四位下）

このように、大和長岡は、奈良時代において法律の専門家として重要な役割を果たし、晩年にはその功績を認められ、異例の昇進を遂げた人物でした。

参考文献
宇治谷孟『続日本紀 （上）』講談社〈講談社学術文庫〉、1992年
宇治谷孟『続日本紀 （中）』講談社〈講談社学術文庫〉、1992年
宇治谷孟『続日本紀 （下）』講談社〈講談社学術文庫〉、1995年

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