僧ヶ岳

僧ヶ岳（そうがだけ）

富山県魚津市と黒部市にまたがる標高1,855mの山で、飛騨山脈（北アルプス）立山連峰の北端に位置します。二級水系片貝川の支流である布施川の源流でもあります。

歴史

『千光寺旧記』によると、大同元年（809年）に現在の経田浜（当時は佛ヶ浦）で千手観世音菩薩像と大威徳明王像が引き上げられ、小川寺に安置されたことが山の信仰の始まりとされています。その後、大威徳明王像は山頂に移され、奥の院が創設されました。1845年には既に「僧ヶ岳」という名称が使われていたことが記録されています。春から初夏の雪解け時には、雪形が現れることから、僧馬岳、仏ヶ岳などの別名でも呼ばれていました。この地域の人々は、山に安置された仏を拝み、雪形を目安に農作業の時期を決めていました。

自然

僧ヶ岳は、中部山岳国立公園には含まれていませんが、日本海からの季節風の影響を強く受ける風衝地帯に位置しており、特有の植物が多く見られます。特に雪椿は貴重な植物として保護されており、僧ヶ岳一帯は県立自然公園に指定されています。

植生

山の大半は雪に覆われますが、雪は植物を保温・保護する役割を果たし、チシマザサやユキツバキなどの雪に適応した植物が見られます。また、冷涼な気候を好むブナや落葉低木の森が広がり、美しい紅葉が見られます。一方、前僧ヶ岳と僧ヶ岳の間にある仏ヶ平は、強風により雪が飛ばされるため、1mを超えるような植物はほとんどなく、草原が広がっています。ニッコウキスゲやシモツケソウ、タカネバラなどのお花畑が見られます。尾根裏側の風下には雪田が見られ、雪解け後にはハクサンオオバコやツガザクラ、ハクサンコザクラなどが咲きます。片貝川ルートの中腹にある池尻の池には、ミズバショウの大群落があり、シラネアオイも自生しています。

信仰

僧ヶ岳は、魚津市小川寺、小川山千光寺の奥の院とされています。かつては、千手観音は観音平に、大威徳明王は僧ヶ岳に安置され、冬は仮殿に遷座されていました。春と秋には仏像の送り迎えの祭りが盛大に行われていました。現在でも、僧ヶ岳保勝会によって大威徳明王像が仏平に安置され、法要が行われています。小川寺の秋祭りで舞われる獅子舞は、新川地方の獅子舞の源流とされ、天狗踊りの手振りは日本最古とも言われています。

雪形

雪解けが進むにつれて、山肌には様々な雪形が現れます。「僧」「馬」「兎」「虚無僧」「大入道」「猫」「猪」など、変化しながら現れる雪形は全国的にも珍しく、農作業の目安とされてきました。特に「尺八を吹く虚無僧」や「馬」「鶏」などの最終形態は、多くの人々を魅了します。これらの雪形は、黒部市と魚津市の無形文化財に指定された布施谷節にも歌われています。

登山道

現在休止中のコース

布施川本流コース：最短ルートですが、現在は休止中です。
小杉谷コース：ワサビ谷と呼ばれるワサビの宝庫でしたが、現在は休止中です。

現在利用可能なコース

烏帽子尾根（小杉谷）コース：嘉例沢森林公園を起点とする最も長いコースです。
大原台からの林道コース：宇奈月温泉から林道を利用し、手軽にアクセスできるため利用者が多いコースです。
尾沼谷からの新道：黒部市宇奈月ダムの温泉施設横から稜線へ向かうコースです。
東又コース：魚津市側からの唯一の登山道で、急な登りが続きます。

その他

僧ヶ岳林道は、山腹に作られた道ですが、落石が多く、通年で通行止めとなっています。自然が回復しつつあります。

近隣の山

僧ヶ岳周辺には、越中駒ヶ岳、北駒ヶ岳、烏帽子山などがあります。これらの山々は、立山連峰や毛勝三山とは少し離れた場所に位置し、一つのグループのように見えます。

その他

前僧ヶ岳には、旧陸軍が援助したモリブデン採掘会社の建物跡があります。
1995年には、林道脇で坂本堤弁護士の妻が遺体で発見されました。

関連図書

『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版
『改訂版　富山県の山』山と渓谷社

参考文献・出典

『黒部市誌』昭和39年
谷俊雄（執筆・編集者代表）『わたしたちの布施谷』黒部市立尾山小学校
柴垣光郎『にいかわのむかしばなし』第一法規出版、1994年
丸田進編『東布施村誌』1994年
橋本廣・佐伯邦夫編『富山県山名録』桂書房、2001年
長井真隆『くろべ自然とのつながり』黒部市（のちハート工房）、2004年

外部リンク

僧ヶ岳／魚津市観光協会公式サイト
黒部市東布施ウェブサイト
* 富山県環境審議会自然環境専門部会（第1回）議事録

この情報は、僧ヶ岳の歴史、自然、信仰、雪形、登山道、そして周辺の山々について、詳細な情報を提供しています。この情報が、あなたの山への理解を深める一助となれば幸いです。

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