六角氏頼

六角氏頼：動乱の時代を生き抜いた近江の守護大名

六角氏頼（ろっかく うじより）は、南北朝時代の武将であり、守護大名。六角氏の4代および6代当主として、激動の時代を生きました。

生涯

嘉暦元年（1326年）に六角時信の嫡男として誕生。佐々木氏嫡流である六角氏は、鎌倉幕府の滅亡とともに一時没落しましたが、父の出家を受け、氏頼は建武2年（1335年）頃に幼くして家督と近江守護職を継承しました。

室町幕府においては、庶流の京極氏の勢力が強く、六角氏はその影響下に置かれることになります。近江国守護職をめぐり京極氏の佐々木道誉と一時争いますが、佐々木道誉の娘を妻に娶るなど、関係改善にも努めました。

延元3年/暦応元年（1338年）、南朝の北畠顕家軍が青野原の戦いで幕府軍を破ると、道誉と共に援軍として派遣され、近江・美濃国の国境で南朝軍を迎え撃ちました。興国5年/康永3年（1344年）には検非違使に任じられるなど、佐々木氏嫡流としての立場を示しました。

また、延元3年/暦応元年（1338年）11月5日には、室町幕府初代将軍・足利尊氏の加冠によって元服し、「氏」の偏諱を受けて氏頼と名乗り、同時に左衛門佐に任ぜられ、従五位下に叙されました。

足利将軍家の内紛から発展した観応の擾乱では、道誉と共に尊氏・高師直派に属していましたが、正平6年/観応2年（1351年）1月19日に尊氏の弟である直義派が有利となると、直義方に降りました。しかし、高師直が殺害された後も両派の対立が再燃し、双方から味方に誘われ窮地に陥ったため、6月25日に出家して崇永と名乗り、近江守護を辞任して家督も長男の義信に譲りました。その後、近江守護には弟の山内信詮・直綱や義信が選ばれたり、道誉が尊氏の嫡男である義詮から佐々木氏の惣領格に任命されたりしました。

正平9年/文和3年（1354年）には政界復帰し、義信に代わって近江守護に復しました。さらに、正平23年/応安元年（1368年）には禅律方・引付頭人も務めています。近江守護再任後は禅宗に帰依し、正平16年/康安元年（1361年）に寂室元光を招いて永源寺を開基しました。

しかし、家督は正平20年/貞治4年（1365年）に嫡男の義信が17歳で夭折したため、京極氏から道誉の孫で嫡男の高経を猶子に迎え後見を務めました。

正平25年/応安3年（1370年）6月7日、45歳で死去。近江守護は高経が引き継ぎましたが、氏頼晩年に生まれた亀寿丸が元服して六角満高となると、近江守を解かれて京極家に戻されました。

六角氏頼は、激動の南北朝時代において、佐々木氏嫡流としての家を守り、近江国の安定に尽力した人物として、歴史に名を刻んでいます。

脚注

出典

森茂暁『人物叢書 佐々木導誉』吉川弘文館、1994年。
佐々木哲『佐々木六角氏の系譜』思文閣出版、2006年。
新谷和之「南北朝・室町期における六角氏の家督と文書発給」川岡勉 編『中世後期の守護と文書システム』思文閣出版、2022年

関連項目

寺社本所領事
* 観音寺城 - 北畠顕家の攻撃を防ぐために氏頼が籠城したとされる。

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