儀銘

明代官僚 儀銘：忠誠と民への思いを貫いた生涯

儀銘(ぎめい、1382-1454年)は、明代の著名な官僚です。字は子新、本貫は膠州高密県。儀智の子として生まれ、若くして呉訥に師事し、学問を磨きました。

宣徳帝の即位(1425年)を機に、儀銘の優れた能力は朝廷に認められます。兵部侍郎戴綸の推薦により、行在礼科給事中として仕官。その後、翰林院修撰、侍講と要職を歴任し、『宣宗実録』編纂にも携わりました。郕王府左長史に転じた後、正統年間には、歴史の転換点となる出来事に関わります。

1449年、郕王朱祁鈺が監国すると、王振弾劾を巡り朝議は騒然となりました。廷臣たちの叫び声が飛び交う中、儀銘は一人、郕王の前に進み出て冠を脱ぎ捨て、上奏。王振の誅殺を強く主張し、混乱を収拾する役割を果たしたのです。

朱祁鈺が景泰帝として即位すると、儀銘は礼部左侍郎に任命され、さらに経筵官を兼任しました。景泰帝は講義の際に、宦官に金銭を投げさせ、講官に拾わせるという「恩典」を行っていましたが、儀銘はこの恩典を受けた数少ない文臣の一人でした。その後、南京礼部尚書に昇進し、朱見済が皇太子になると太子太保の位も加えられ、兵部尚書にも就任、詹事を兼任するなど要職を歴任しました。

儀銘の官職は、権力に近づくことだけを目的としたものではありませんでした。民衆の苦しみを深く憂い、その救済に尽力したのです。蘇州府、淮安府の諸州で発生した大雪による民衆の凍死、餓死という悲惨な事態に対し、儀銘は景泰帝に訴え、民衆への負担軽減を強く求めます。また、黄河堤防修復工事で徴発された膨大な人数と物資についても、民衆への負担軽減を訴え続けました。

さらに、儀銘は『皇明祖訓』を書き写し景泰帝に献上するなど、儒教思想に基づいた政治理念を貫き、敬天愛人を説きました。こうした彼の姿勢は、民本主義的な側面を持つものとして評価できます。

1454年、73歳で亡くなりました。特進、光禄大夫、左柱国、太師の位を追贈され、「忠襄」と諡されました。その功績は、明代の官僚としてだけでなく、民衆を思いやる政治家としての功績として後世に伝えられています。

儀銘には、錦衣衛百戸となった長男・儀海と、郷挙により礼科給事中となった末子・儀泰がいました。

参考文献：『明史』巻152 列伝第40

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