行在

行在（あんざい）とは

行在とは、本来の意味としては「行鑾駐蹕の所在」、つまり皇帝の外出時に、皇帝の乗り物である鑾（らん）が一時的に滞在する場所を指します。しかし、歴史的には、名目上の首都ではないものの、皇帝と皇宮、そして朝廷が置かれ、事実上の首都としての機能を果たす場所を意味するようになりました。行都とも呼ばれます。

例えば、清の咸豊帝が北方へ行幸した際の熱河の避暑山荘などが、行在の例として挙げられます。中国の歴代皇帝にとって、行在は政治の中心地となることがありました。

行在と類似する用語

中国の歴史においては、陪都や行宮といった用語も存在しますが、それぞれ意味合いが異なります。

陪都: 行在となった後に、政治の中心地としての地位を確立することが多くありました。
行宮: かつては皇帝が一時的に滞在する場所として使われ、行在と呼ばれることもありました。円明園、鞏華城、承徳避暑山荘などがその例です。

歴史上の行在の例

杭州

靖康の変によって北宋が金に滅ぼされた後、高宗は南方に逃れ、南宋を建国しました。故地を回復する決意を示すため、建炎3年（1129年）の明受の変の後、杭州を臨安府とし、行在としました。そして、北宋の歴代皇帝の廟があった東京開封府（汴京）を京師と称しました。その後、紹興8年（1138年）に臨安を都と定めました。端平元年（1234年）に金が宋・モンゴル連合軍によって滅ぼされた後も、南宋は端平入洛によって故都を回復しようとしました。

『東方見聞録』や同時期の西洋の著述では、杭州を「キンザイ、Quinsay」と呼んでおり、元代の初期まで、行在は杭州の一般的な通称でした。

北京

明の燕王朱棣（後の永楽帝）は、清君側を名目に靖難の変を起こし、甥にあたる建文帝の京師である金陵応天府を攻め落とし、建文4年（1402年）に皇位に就きました。永楽帝は即位後、モンゴル（旧北元）の脅威に備えるため、出発点である燕京北平への遷都を決意しました。永楽元年（1403年）に北平を行在に昇格させ、六部を設立して「行在六部」と称しました。永楽帝はその後も燕京の経営に力を入れ、宮殿を造営し、大運河を浚渫し、頻繁に訪れました。永楽19年（1421年）に正式に北京遷都を行い、京師となったことで、北京は行在ではなくなりました。金陵応天府は陪都となりました。

永楽帝の死後、仁宗（洪熙帝）が即位しました。仁宗は首都を太子監国時代の縁故地である金陵（南京）に戻すことを望み、まずは北京を行在に変えましたが、仁宗が在位1年で急逝したため、南京への還都は実現しませんでした。英宗の正統6年（1441年）になってようやく北京は京師に戻り、行在とは呼ばれなくなりました。

西安

清末、義和団の乱で八カ国連合軍が北京を陥落させた後、光緒帝と共に西安に逃れた西太后は、8カ月間で12万両もの白銀を使ったと言われています。

関連項目

帝都 (曖昧さ回避)
首都
遷都
京師 (曖昧さ回避)
臨時首都
陪都（複都制）
首府
行宮
行館
離宮 - 皇居や王宮とは別に設けられた避暑・避寒、静養の宮殿。
捺鉢 - 遼の移動宮廷。斡魯朶とも。
中央政府所在地

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