元帥 (イギリス)

イギリス軍における元帥 (Marshal)

イギリス軍における元帥（Marshal）は、各軍の最上級に位置する階級であり、陸軍元帥（Field Marshal）、海軍元帥（Admiral of the Fleet）、空軍元帥（Marshal of the Royal Air Force）が存在します。北大西洋条約機構（NATO）の階級符号ではOF-10に相当し、伝統的にイギリス君主が各軍の元帥を兼ねることが慣例でしたが、女王の場合はこの称号を帯びることはありません。

1990年代以降、平時において現役者を元帥に任命することはなくなり、政府は王族や特に上級の士官に対して元帥を任じる権限を持っています。

各軍の元帥について

陸軍元帥 (Field Marshal)

陸軍元帥の階級章は、花冠の中に2本の交差した元帥杖があり、その上に王冠が描かれています。12世紀以降、イングランドには御馬卿（Lord Marshal）という官職がありましたが、近代軍の称号としては、ハノーヴァー朝初代国王ジョージ1世によって大陸の軍隊様式から導入されました。

初代陸軍元帥は1736年に任官し、多くの場合、陸軍元帥は名誉連隊長としての地位も併せ持っていました。20世紀前期には、陸軍参謀総長が陸軍元帥となるのが一般的でしたが、国防参謀総長が創設されてからは、その職にある陸軍軍人が陸軍元帥に任官しました。現在は平時には昇任は廃止されていますが、名誉称号としての任命は行われています。

2022年現在、生存する陸軍元帥は4名で、うち2名が非王室メンバーです。王室からはケント公エドワードとチャールズ3世が元帥となっています。

海軍元帥 (Admiral of the Fleet)

海軍元帥は帆船時代から発展してきた階級です。17世紀まではアドミラル（Admiral）がイギリス艦隊の総司令官であり、艦隊全体を指揮する役職として設けられました。一般的に「海軍元帥」と訳されますが、明治13年には「水軍元帥」と訳されていました。

海軍軍人のトップである第一海軍卿は自動的に海軍元帥に昇任していましたが、1996年にこの制度は廃止されました。2022年時点で在任者は3名で、王室メンバーからはチャールズ3世が海軍元帥となっています。

空軍元帥 (Marshal of the Royal Air Force)

空軍元帥は、かつては現職の国防参謀総長や退役した空軍参謀総長が任じられていましたが、1990年代の軍縮以降、昇任は廃止されました。戦時には任用が可能で、平時においても政府は王族や上級士官を任用できます。2022年時点で生存する元帥は3名で、王室メンバーからはチャールズ3世が元帥となっていますが、非王室メンバーは全員空軍を退役しており、現役者は存在しません。

他国籍者への儀礼称号としての元帥

イギリス軍では、他国の王族や要人に対して儀礼称号として元帥の称号を贈ることがありました。以下はその例です。

陸軍

レオポルド1世（ベルギー）
ヴィレム2世（オランダ）
ヴィルヘルム2世（ドイツ帝国）
フランツ・ヨーゼフ1世（オーストリア帝国）
ニコライ2世（ロシア帝国）
大正天皇（大日本帝国）
フェルディナン・フォッシュ（フランス）
アルベール1世（ベルギー）
アルフォンソ13世（スペイン王国）
昭和天皇（大日本帝国）
ヤン・スマッツ（南アフリカ連邦）
マヘンドラ（ネパール）
ハイレ・セラシエ1世（エチオピア帝国）
ビレンドラ（ネパール）

海軍

ヴィルヘルム2世（ドイツ帝国）
アルフレート (ザクセン＝コーブルク＝ゴータ公)（ドイツ帝国）
ニコライ2世（ロシア帝国）
ハインリヒ（ドイツ帝国皇太子）（ドイツ帝国）
オーラヴ5世（ノルウェー）
カール16世グスタフ（スウェーデン）

まとめ

イギリス軍の元帥は、歴史と伝統のある階級であり、その役割は時代とともに変化してきました。現在では名誉称号としての意味合いが強くなっていますが、その象徴性は依然として重要です。各軍の元帥の歴史と役割を理解することは、イギリス軍の階級制度を理解する上で不可欠です。

関連項目

陸軍元帥 (イギリス)
海軍元帥 (イギリス)
空軍元帥 (イギリス)
元帥
元帥杖
軍服 (イギリス)

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