入不二基義

入不二 基義

人物概要

入不二 基義（いりふじ もとよし）氏は、1958年11月11日生まれの日本の哲学者です。分析哲学、倫理学、論理学を専門分野とし、現在は青山学院大学教育人間科学部の教授として教育研究活動を行っています。学術的な探究に加え、特異な経歴や活動でも知られています。

経歴

神奈川県立湘南高等学校を卒業。高校時代は文芸部に所属しており、同級生には作家の阿部嘉昭氏や日本語学者の今野真二氏がいました。その後、東京大学文学部哲学科に進学し、卒業。東京大学大学院人文科学研究科哲学専門課程で修士課程を修了し、さらに博士課程において単位を取得しました。最終的に東京大学より文学修士の学位を授与されています。

大学院での学びを終えた後、駿台予備学校の英語科講師を務め、教育に携わります。その後、山口大学で助教授として大学教員のキャリアをスタートさせました。2004年からは青山学院大学に籍を移し、教育人間科学部教授として現在に至ります。朝日カルチャーセンターの講師としても活動し、一般向けの啓蒙活動にも力を入れています。

研究分野と思想

入不二氏の専門は分析哲学、倫理学、論理学という多岐にわたる分野に及びます。著作を通じて、時間論、運命論、相対主義、自己論など、哲学の根源的な問題を探求しています。例えば、『相対主義の極北』では相対主義の可能性と限界を深く掘り下げ、『時間は実在するか』では、日常的に自明視されている「時間」という概念に鋭い問いを投げかけています。また、『あるようにあり、なるようになる』や『現実性の問題』といった著作では、存在や現実といった難解なテーマに独自の視点からアプローチしています。

人物・エピソード

入不二氏のユニークな側面として特に注目されるのが、その身体的な活動です。なんと51歳という年齢からレスリングを始め、現在も現役の選手として大会に出場しているという驚くべき経歴を持っています。知の探求だけでなく、肉体的な挑戦も続けるその姿勢は、多くの人に刺激を与えています。

また、珍しい苗字である「入不二（いりふじ）」には、本人によれば由来があるとのことです。この苗字は、大乗仏教の重要な経典の一つである『維摩経（ゆいまきょう）』に説かれる「入不二法門（にゅうふにほうもん）」という言葉に由来すると語っています。「入不二」とは、善と悪、生と死、真と偽といった、通常は対立するものと考えられている二つの概念が、本質においては分かちがたく一体である（不二）という真理を悟り、その境地に入ること（入る）を意味する言葉です。この苗字にまつわるエピソードからも、入不二氏の哲学的な探求の姿勢や、物事を二項対立で捉えない柔軟な思考の一端がうかがえます。

主要著作

単著

『〈思考する〉英文読解』（駿台文庫、駿台レクチャー叢書） 1993年
『相対主義の極北』（春秋社 2001年／ちくま学芸文庫 2015年）
『時間は実在するか』（講談社現代新書） 2002年
『ウィトゲンシュタイン - 「私」は消去できるか』（日本放送出版協会、シリーズ・哲学のエッセンス） 2006年
『時間と絶対と相対と - 運命論から何を読み取るべきか』（勁草書房） 2007年
『哲学の誤読 - 入試現代文で哲学する!』（ちくま新書） 2007年
『足の裏に影はあるか? ないか? 哲学随想』（朝日出版社） 2009年
『あるようにあり、なるようになる - 運命論の運命』（講談社） 2015年
『現実性の問題』（筑摩書房） 2020年
『問いを問う - 哲学入門講義』（ちくま新書） 2023年

主な共著・編著

『大学デビューのための哲学』（霜栄, 大島保彦共著、はるか書房） 1992年
『哲学者たちは授業中』（入江幸男, 松葉祥一, 上野修, 大島保彦共著、ナカニシヤ出版） 1997年
『〈私〉の哲学を哲学する』（永井均, 上野修, 青山拓央共著、講談社） 2010年
『現代哲学ラボ 第1号：入不二基義のあるようにありなるようになるとは?』（哲楽編集部編、MIDアカデミックプロモーションズ） 2016年
『運命論を哲学する』（森岡正博共著、明石書店、現代哲学ラボ・シリーズ） 2019年
『アントニオ猪木とは何だったのか』（香山リカ, 水道橋博士, ターザン山本, 松原隆一郎, 夢枕獏, 吉田豪共著、集英社新書） 2023年
* 『英語で読む哲学』（北野安寿子, 小池翔一, 小山悠, 壁谷彰慶, 今村健一郎著、編著、研究社） 2013年

これらの著作や活動を通して、入不二基義氏は日本の哲学界において独自の存在感を示し続けています。

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