八幡神社のイスノキ

八幡神社のイスノキ

静岡県下田市吉佐美の吉佐美八幡神社境内に生育する「八幡神社のイスノキ」は、国の天然記念物に指定されている巨木です。

イスノキについて

イスノキ（学名: Distylium racemosum）は、マンサク科イスノキ属の常緑広[[葉樹]]で、日本では主に四国や九州などの温暖な地域に自生しています。伊豆半島は本来イスノキの自生地ではありませんが、この八幡神社のイスノキのように、いくつかの神社境内で見られるものは、過去に移植されたと考えられています。この木は、イスノキの分布の北東端に位置する貴重な存在です。

八幡神社のイスノキの特徴

八幡神社のイスノキは、下田市街から南西約3.5kmの場所に位置しています。この地域は、多々戸浜、入田浜、田牛などの美しい海岸が連なる南伊豆の温暖な地域です。イスノキは、海岸近くの丘陵地の麓、大賀茂川の右岸にあります。

樹高は約15メートルから17メートル、根回りは4.5メートルに及び、地表には網目状に根が露出しています。幹囲は3.95メートルと、一般的なイスノキの幹囲（1メートルから1.5メートル程度）を大きく上回っており、その巨木ぶりが際立っています。

植物学者の中井猛之進は、1940年の調査で、伊豆半島にはイスノキの自生がないため、この木は他所から移植されたものと結論づけました。伊豆半島で確認されている他のイスノキも、同様に神社境内に植栽されたものに限られています。

正確な樹齢は不明ですが、地元の伝承では木曽義仲の残党を祖とする家々が、義仲の没後約100年後に移植したとされています。1941年の静岡県史では推定樹齢650年、下田市教育委員会では800年と推定されています。

中井の調査報告書には、境内の植生についても記述があり、大賀茂川の河畔には西日本に分布するハマボウの群落、山林にはオオバヤドリギが寄生したタブノキの老木があることが記録されています。

虫こぶ「ちゃっからぽっから」

イスノキの葉や葉芽には、虫癭（虫こぶ）ができることが知られています。地元ではこれを「ちゃっからぽっから」と呼んでいます。この虫こぶは、モンゼンイスアブラムシというアブラムシが寄生することで形成され、6から8ミリメートルほどの大きさになります。子供たちは、この虫こぶに穴を開けて音を鳴らして遊んでいたことから、このイスノキは「ヒョウノキ」とも呼ばれ、親しまれています。

交通アクセス

所在地：静岡県下田市吉佐美1722-1

交通：伊豆急行伊豆急下田駅から東海バス田牛方面行きで12分、浜条バス停下車徒歩約2分。または下賀茂・仲本方面行きバスで10分、吉佐美バス停下車徒歩約10分。

参考文献

加藤陸奥雄他監修、近田文弘『日本の天然記念物』講談社, 1995年
文化庁文化財保護部監修『天然記念物事典』第一法規出版, 1971年
本田正次『植物文化財 天然記念物・植物』東京大学理学部植物学教室内 本田正次教授還暦記念会, 1958年
静岡県編『静岡県史蹟名勝天然紀念物並国宝概要』静岡県, 1941年
中井猛之進著、文部省編『天然紀念物調査報告 植物之部 第19輯』文部省, 1942年
帝国森林会 編『日本老樹名木天然記念樹』大日本山林会, 1962年
土屋恭一『伊豆の自然』第8巻, 南伊豆自然保護の会事務局, 1964年
山田正夫『静岡県の国県指定天然記念物 樹木の顔』静岡新聞社, 1989年
渡辺典博『巨樹・巨木 日本全国674本』山と渓谷社, 1999年

関連項目

国の天然記念物に指定されたイスノキは他に例がなく、マンサク科全体を含めても本件のみです。

外部リンク

八幡神社のイスノキ - 国指定文化財等データベース（文化庁）
しずおか文化財ナビ 八幡神社のイスノキ
* ふじのくに文化資源データベース 八幡神社のイスノキ

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