八百板正

八百板正（やおいた ただし）は、大正から平成にかけて活躍した日本の農民運動家、政治家です。1905年4月12日に福島県伊達郡飯野村に生まれ、2004年4月23日に99歳でその生涯を閉じました。

地元の福島中学校（現在の福島県立福島高等学校）を卒業後、早稲田大学専門部法科で学びました。在学中には、旧制中学時代の恩師で後に衆議院議員、兵庫県知事となる阪本勝を頼り、安部磯雄らが率いる日本フェビアン協会に参加しました。この時期、河上丈太郎、賀川豊彦、櫛田民蔵といった著名な社会運動家や思想家との交流を深め、後の活動の基礎を築きます。

大学卒業後、日本労農党や社会大衆党など、当時の無産政党の運動に身を投じました。1929年には郷里の福島に戻り、東北新人会を結成。伊達郡を中心に小作争議の指導にあたり、その活動のために度々投獄される経験もしています。農民の権利向上を目指す八百板の活動は次第に広がりを見せ、1933年には全国農民組合（全農）の中央委員に選出され、農民運動における中心的な存在となっていきました。1938年には大日本農民組合福島県連の理事長を務めています。

第二次世界大戦後、日本の民主化が進む中で、八百板は日本農民組合（日農）の再建に深く関わります。1946年には福島県連会長に就任し、中央農地委員会委員としても活動。その後、1957年に日農の書記長、1962年には全日本農民組合連合会（全日農）の会長を歴任し、戦後日本の農政における農民運動の牽引者の一人となりました。後に全日農の名誉会長にも就いています。

政治家としてのキャリアは、1947年の第23回衆議院議員総選挙から始まります。福島1区から日本社会党公認で出馬し、初当選を果たしました。以来、衆議院議員として通算11期の当選を重ね、国政の場で農民の利益や社会的な課題に取り組んでいきました。また、国際交流にも熱心で、1971年に設立された日本中国農業農民交流協会を改組する形で、1985年に社団法人日中農林水産交流協会を設立し、会長に就任するなど、日中間の農業・農村交流の促進に貢献しました。

日本社会党内では、社会主義協会との対立が激化する中で、八百板は反協会派の主要な人物の一人として活動しました。1979年の第35回衆議院議員総選挙では議席を失うものの、翌年の第12回参議院議員通常選挙で福島県選挙区から立候補し、参議院議員として政界への復帰を果たします。参議院では2期務めました。この間、左派社会党時代には党の国会対策委員長を務め、社会党再統一後は党の中央執行副委員長や参議院議員会長など、党の重職を歴任しました。

国政の傍ら、地元福島県の発展にも深い関心を寄せ、県知事選挙にも二度挑戦しました。1976年には、当時の知事の汚職事件に伴う選挙で、社会党と日本共産党の推薦を受けて立候補しましたが、自由民主党推薦の候補に惜しくも敗れました。

1990年春の叙勲において、長年の功績が認められ、勲一等旭日大綬章を受章。1992年に政界を引退しました。晩年は穏やかに過ごし、2004年に肺炎のため亡くなりました。その功績を称えられ、没後従三位に叙されました。

娘に翻訳家の八百板洋子がいます。

主な著書に『光を食べる』（1985年、言叢社）があります。

もう一度検索