八角三郎

八角三郎：海軍と政治の世界を生きた生涯

八角三郎（やすみ さぶろう）は、1880年（明治13年）12月19日に岩手県盛岡市で生まれ、1965年（昭和40年）1月20日に没した、日本の海軍軍人、そして政治家です。最終階級は海軍中将で、後に衆議院議員も務めました。

生い立ちと海軍への道

八角は岩手県盛岡市の出身で、海軍大将であった栃内曽次郎を叔父に持ちます。原敬からの激励が、彼が海軍兵学校を志願するきっかけになったと伝えられています。岩手県立盛岡尋常中学校から海軍兵学校へと進み、29期生として学びました。入校時の席次は137名中119番でしたが、卒業時には125名中75番と成績を上げました。

海軍軍人としての活躍

海軍では、第一駆逐隊所属の駆逐艦「吹雪」乗組みの中尉として日本海海戦に参加。大尉時代には『敵艦進路及び速力の誤測に対する命中限界算法、魚雷動的発射に於ける誤差』という論文を発表し、海軍水雷術の発展に大きく貢献しました。彼は海軍水雷学校の校長や第二水雷戦隊の司令官を歴任し、水雷の権威として知られるようになりました。また、海軍部内では中国通としても知られており、1922年のワシントン会議では随員候補にもなりました。その後、大湊要港部司令官を最後に予備役となっています。

政治家としての転身

故郷である岩手県から政友会の推薦を受け、衆議院議員に立候補し当選。以来、4期13年間衆議院議員を務めました。中学、兵学校を通じて同期であった米内光政とは親友であり、太平洋戦争終結時の鈴木貫太郎内閣では、海軍大臣であった米内を補佐する意味合いも兼ねて内閣顧問に就任し、鈴木首相や米内海相、東郷外相らが中心となって進めた終戦工作に協力しました。ちなみに、鈴木内閣の国務大臣であった左近司政三は海軍大学校甲種学生の同期生でした。

戦後は大政翼賛会の推薦議員であったため、公職追放となりました。

人物像

海軍兵学校の同期生では、米内光政の他に荒城二郎、米村末喜らと親交が深かった一方で、対英米強硬派であった石丸藤太とは関係があまり良くなかったようです。米内同様に長身であったと伝えられています。

家族

母方の祖父は盛岡藩士の栃内理平、父は八角彪一郞。叔父には海軍大将の栃内曽次郎がいます。妻は海軍兵学校教師・荒川重平の四女である澄子。長男の高士は安井誠一郎の岳父にあたり、新村出は相婿にあたります。

年譜

1880年（明治13年）：岩手県南岩手郡仙北町（現在の盛岡市）に生まれる。
1898年（明治31年）：海軍兵学校に入校。
1901年（明治34年）：海軍兵学校を卒業し、海軍少尉候補生となる。
1905年（明治38年）：駆逐艦「吹雪」乗組として日本海海戦に参加。
1920年（大正9年）：海軍大佐に昇進。
1927年（昭和2年）：海軍水雷学校長に就任。
1930年（昭和5年）：海軍中将に昇進。
1932年（昭和7年）：衆議院議員に当選。
1945年（昭和20年）：鈴木内閣顧問に就任。
1965年（昭和40年）：死去。

主要著述物

『思い出ずることども』杜陵印刷（私稿版）、1957年。
『忘れ得ぬことゞも』熊谷印刷（印刷）、1959年。

八角三郎の生涯から学ぶこと

八角三郎は、海軍軍人として、また政治家として、激動の時代を生き抜きました。水雷術の発展に貢献し、衆議院議員として国政にも参与。終戦工作にも関わるなど、その足跡は多岐にわたります。彼の生涯は、日本の近代史を語る上で欠かせない人物の一人と言えるでしょう。

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