栃内曽次郎

栃内曽次郎：海軍大将、そして英国趣味のジェントルマン

栃内曽次郎（1866年7月19日 - 1932年7月12日）は、日本の海軍軍人であり、最終階級は海軍大将にまで昇りつめました。晩年には貴族院議員も務め、その生涯は激動の時代と深く結びついています。

生い立ちと海軍への道

栃内は、盛岡藩士の次男として岩手県に生まれました。札幌農学校予科、攻玉社を経て、1886年に海軍兵学校を卒業（13期生）。その後、海軍大学校を卒業し、日清戦争では「金剛」分隊長などを歴任、その才能を徐々に開花させていきました。

戦争と昇進

日露戦争では「宮古」艦長を務めましたが、同艦は機雷により沈没。その後、「武蔵」や仮装巡洋艦「八幡丸」の艦長を経て、日本海海戦には「須磨」艦長として従軍しました。戦後は在英大使館付武官として3年半イギリスに滞在。帰国後、海軍少将・軍務局長、練習艦隊司令官、横須賀海軍工廠長などを歴任し、1914年には海軍中将に昇進しました。さらに、第2艦隊司令官、第1艦隊司令官、技術本部長などを経て、1917年には海軍次官に就任しました。

1920年には海軍大将となり、第1艦隊長官兼連合艦隊司令長官、佐世保鎮守府司令長官、軍事参議官を歴任。1924年に予備役編入となりました。その後、ロンドン軍縮条約には反対の立場を取りました。

晩年

1932年3月15日に貴族院議員となりますが、同年7月、盛岡市の旧制岩手中学校校長就任講演中に倒れ、そのまま死去しました。

人物像

栃内はイギリス駐在中に英国流の生活に傾倒し、私服からハンカチに至るまでロンドンの高級ブランドのオーダーメイド品を身につけ、「海軍一のジェントルマン」と称賛される一方で、「イギリスかぶれ」と批判もされました。また、次官時代には、人力車に乗車中に自動車と衝突し、右目を失明するという事故にも遭っています。

彼は、及川古志郎ほど有名ではありませんが、蔵書家としても知られていました。及川が漢籍を好んだのに対し、栃内は洋書、特に英語の書籍を愛し、英和辞典を一切使わずに読みこなしたと言われています。

栄典

栃内は、その功績から多くの位階と勲章を授与されました。以下に主なものを列挙します。

位階:
正八位 (1891年)
従七位 (1893年)
正七位 (1895年)
従六位 (1898年)
従五位 (1905年)
正五位 (1910年)
従四位 (1914年)
正四位 (1919年)
従三位 (1921年)
正三位 (1924年)
従二位 (1932年)

勲章等:
勲六等単光旭日章 (1895年)
勲四等旭日小綬章 (1901年)
功四級金鵄勲章、旭日中綬章 (1906年)
金杯一個 (1912年, 1921年)
勲二等瑞宝章 (1914年)
勲一等旭日大綬章、大正三四年従軍記章 (1915年)
大礼記念章 (1915年)
第一回国勢調査記念章 (1921年)

外国勲章:
レジオンドヌール勲章シュヴァリエ (フランス、1901年)

親族

栃内の親族には、以下のような人物がいます。

子：栃内吉彦（北海道帝大教授、農学部付属植物園園長、日本植物病理学会会長）
孫：栃内香次（北海道大学工学部教授、北海学園大学経営学部教授）
従兄弟：鹿島精一（鹿島建設初代社長）
甥：栃内一彦（第10代海上保安庁長官、日本航空開発株式会社（JALホテルズ）代表取締役社長）
娘婿：安場保雄（海軍中将）、大西新蔵（海軍中将）

まとめ

栃内曽次郎は、日本の海軍史において重要な役割を果たした人物であり、その独特な人物像は多くの人々に記憶されています。英国趣味を愛し、国際的な視野を持っていた彼は、激動の時代を駆け抜けた、まさに「海軍のジェントルマン」と呼ぶにふさわしい人物だったと言えるでしょう。

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