公孫敖

公孫敖（こうそん ごう）は、前漢時代の人物で、生没年は明らかではありません。彼は義渠の出身で、武帝の時代に将軍としてその名を知られました。

景帝の時代には騎郎として仕えていました。武帝の時代に入り、彼の姉が武帝の寵愛を受けた衛青の友人であったことが、彼の運命を大きく変えます。衛青が捕らえられ、処刑されそうになった際、公孫敖は彼を救出しました。この功績により、公孫敖は武帝に重用されるようになり、太中大夫という官職に任命されました。

元光6年（紀元前129年）、公孫敖は騎将軍として匈奴攻撃に参加しました。彼は1万の騎兵を率いて代郡から出陣しましたが、7000騎を失うという大敗を喫しました。この責任を問われ、本来は斬刑に処されるはずでしたが、罪を贖うことで庶民に落とされました。

しかし、その後も公孫敖は軍人としての道を歩み続けました。護軍都尉として衛青に従軍し、元朔5年（紀元前124年）には列侯（合騎侯）に封じられました。翌年には中将軍となり、再び大将軍衛青に従って匈奴討伐に出陣しました。

元狩2年（紀元前121年）、公孫敖は驃騎将軍霍去病に従い、北地から匈奴を攻めました。しかし、この戦いで彼は道に迷い、霍去病と合流することができませんでした。この失態により、再び斬刑に相当する罪を犯しましたが、罪を購うことで爵位を失い、庶民に戻されました。

その後、公孫敖は校尉として大将軍衛青に従って従軍しましたが、目立った功績を挙げることはできませんでした。太初元年（紀元前104年）には、因杅将軍として受降城を築きました。天漢2年（紀元前99年）には、李広利に従い西河から匈奴を討ちましたが、天漢4年（紀元前97年）には雁門から1万騎を率いて出撃したものの、左賢王との戦いで不利となり退却を余儀なくされました。

太始元年（紀元前96年）、公孫敖は兵を多く失ったことを理由に死罪を宣告されました。しかし、彼は死んだと偽って民間に隠れました。数年後、彼は捕らえられ、彼の夫人が巫蠱を行っていたという罪で、腰斬に処せられました。さらに、一族も皆連座して処刑されるか、奴隷に落とされるという悲惨な結末を迎えました。

公孫敖の生涯は、武帝時代の匈奴との戦いにおける一人の将軍の栄光と挫折、そして悲劇的な最期を描き出しています。

参考文献
* 班固著『漢書』巻6武帝紀、巻17景武昭宣元成功臣表、巻55衛青伝、霍去病伝

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