兼明親王

兼明親王について

兼明親王（かねあきらしんのう）は、平安時代前期から中期に活躍した皇族で、日本の歴史において重要な役割を果たしました。彼は醍醐天皇の第11皇子として生まれ、後に臣籍降下して源 兼明として知られるようになりました。この変遷の中で、彼は左大臣に昇進し、「御子左大臣」と呼ばれました。しかし、政治的な理由から晩年に皇籍に復帰し、中務卿に任じられたことから「中書王」または「前中書王」と名乗るようになりました。

経歴

延喜20年（920年）、彼は源高明や醍醐天皇の他の皇子女たちと共に臣籍降下し、「源朝臣」としての姓を与えられました。承平2年（932年）には無位から従四位上に就任し、その後、播磨権守の職に抜擢されます。天慶2年（939年）には右近衛権中将に、公卿としての階級を上昇させていきました。

また、天慶7年（944年）には参議として公卿に列し、同時に治部卿も兼任しました。天慶9年（946年）には正四位下、続いて大嘗会に伴って従三位に昇叙され、彼の出世は順調に進みました。その後も、権中納言や中納言、正三位、大納言など様々な官職を歴任し、康保4年（967年）には従二位に叙任されました。

安和2年（969年）に発生した安和の変では、彼の兄である左大臣の源高明が失脚しましたが、兼明本人は連座を免れ、一時的に殿上を取り止めただけでした。円融朝の天禄2年（971年）には、右大臣を経ずに左大臣に就任し、さらに貞元2年（977年）に勅命により57年ぶりに皇籍に復帰し、二品に叙せられました。復帰の背景には、藤原兼通と兼家兄弟の争いが絡んでおり、彼の復帰はこの政局に影響を与えたと考えられています。

兼明親王の復帰は、円融天皇が異母兄の源昭平の皇籍復帰を望んでいたこととも関連しています。この人事に対して兼明親王は強い不満を抱き、後に詩文『菟裘賦』の中で彼の立場を批判しました。寛和2年（986年）には中務卿を辞し、その後、嵯峨に隠棲しました。

人物

兼明親王の才能は広く認められ、甥の具平[[親王]]と並んで博学多才な人物として知られています。また、彼は藤原佐理や藤原行成と共に三蹟の一人に数えられることもあり、その詩文は『江談抄』や『本朝文粋』に今でも残されています。特に『後拾遺和歌集』に収められた和歌は知られています。彼の作は、世界の移ろいを表現し、情感豊かなものでした。

死去

延元元年（987年）、兼明親王は74歳で亡くなりました。彼には「御子左大臣」や「御子左」という別称がありますが、これは彼が醍醐天皇の皇子でありながら左大臣であったことを指しています。親王の陣屋にはやがて藤原長家が住み着き、後に御子左家と呼ばれることとなります。彼の功績は、平安時代の政治と文化に多大な影響を与えたことから、今に伝わっています。

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