内村遺跡

内村遺跡：縄文と平安の息吹が残る複合遺跡

秋田県仙北郡美郷町千屋字内村に位置する内村遺跡は、縄文時代中期と平安時代を主要な時期とする集落遺跡です。水田地帯に立地していますが、扇状地の扇頂部に位置するため、周囲より標高が高く、砂礫が目立つ地形で、古くから土器などが発見されていました。

発見の経緯と調査

内村遺跡は、県営圃場整備事業に先立ち、1978年に範囲確認調査と性格調査が実施されました。その後、1980年には秋田県教育委員会（秋田県埋蔵文化財センター）によって、記録保存を目的とした本格的な発掘調査が行われました。

調査成果：縄文時代と平安時代の遺構・遺物

発掘調査の結果、縄文時代前期中葉の遺物も少量出土しましたが、遺跡の主要な時期は縄文時代中期と古代であることが判明しました。

縄文時代の遺構と遺物

縄文時代中期末葉のものと思われる竪穴建物跡17棟、炉跡16基、土坑4基が検出されました。土器は大木10式土器が主体で、東北地方南部に特徴的な複式炉を伴っています。また、縄文中期中葉の土器や、ごくわずかですが縄文時代前期中葉の土器、弥生土器も出土しています。石器としては、石匙、石鏃、石槍、石錐、掻器などが見つかっています。

建物の平面形は、多くが直径約5メートルの円形をしており、炉は石囲いで壁に近い場所に設けられた複式炉です。磨消縄文が施された深鉢形土器が出土し、縄文時代中期末葉の東北地方南部に特徴的な大木10式土器が多数出土しました。なお、3棟だけは直径8メートルとやや大型の建物跡でした。

平安時代の遺構と遺物

縄文時代の遺構面の上層からは、平安時代の竪穴建物跡3棟、土坑10基、焼土遺構10基が検出されました。須恵器の出土は少なく土師器が主体であることから、この集落は一般的な集落であったと考えられます。竪穴建物は一辺4メートル程度の方形を呈し、土師器は坏、皿、甕、鉢、壺などが多く出土しています。土器の底部が回転糸切り離しになっていることから、ロクロが使用されていたことが分かります。また、当時としては高級品であった緑釉陶器もわずかに出土しています。

1978年の事前調査では、平安時代中葉から後葉にかけての瑞花双鳥八陵鏡（和鏡）が出土しており、保存状態は非常に良好です。

その他の出土品

中国からの渡来銭である唐銭1枚、宋銭2枚、明銭1枚が出土しており、これらは中世に使用されたものと考えられています。

まとめ

内村遺跡は、縄文時代から平安時代にかけての複合遺跡であり、それぞれの時代の特徴的な遺構や遺物が出土しています。これらの出土品は、当時の人々の生活や文化を理解する上で貴重な資料となっています。

参考文献
千畑村郷土誌編纂委員会（編） 編『千畑村郷土誌』千畑村、1986年2月。
冨樫泰時「内村遺跡」『秋田大百科事典』秋田魁新報社、1981年9月。ISBN 4-87020-007-4。

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