円覚寺 (那覇市)

円覚寺の概要

円覚寺（えんかくじ）は、かつて沖縄県那覇市首里当蔵町に存在した臨済宗妙心寺派の仏教寺院です。山号は天徳山とされ、本尊には釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩の三尊が祀られていました。琉球王国におけるこの寺院は、臨済宗の中心地であり、第二尚氏王家の香華院（菩提寺）としての役割も果たしていました。

創建の歴史

円覚寺は、弘治5年（1492年）に尚真王によって創建されました。この寺院は、父である尚円王の冥福を祈るために設立され、2年後の弘治7年（1494年）には京都の僧・芥隠禅師が開山しました。寺院は鎌倉の円覚寺を模倣し、禅宗の七堂伽藍を持つように設計されています。戦前には、重要な建物がいくつか国宝に指定されていましたが、沖縄戦でほとんどが焼失しました。

寺の敷地には放生池や円鑑池があり、特に円鑑池では中国からの冊封使を招いた宴が行われることもありました。毎年旧暦12月20日には、国の安寧と王の健康長寿を願う「美御水の奉納祭」が執り行われ、重要な地域行事の一つとされました。

沖縄戦とその後

明治時代の琉球処分以降、円覚寺は昭和8年（1933年）に国宝に指定されていましたが、沖縄戦によって寺院のほとんどが失われてしまいました。戦後、跡地には琉球大学が建設され、古い遺構は破壊または埋め込まれましたが、1968年には総門が復元されました。その後も、遺構の調査や復元整備が進められています。

2014年には沖縄戦で焼失した三門の復元計画が発表されました。設計は2015年度中に完了し、2018年には復元の見込みでしたが、計画は遅れ、最終的に2023年に完成しました。

文化財としての重要性

円覚寺には、かつて琉球王国の統治者たちの肖像画が保管されていましたが、沖縄戦で失われてしまいました。復元の試みが続けられており、特に著名な文化財には放生橋や天女橋があり、重要文化財として保護されています。放生橋は沖縄返還後に国の重要文化財に指定され、現在もその姿を保っています。

現在の状況

現在、円覚寺の跡地は沖縄県立芸術大学の一部として利用されており、そこに残る文化財や遺構は地域の文化と歴史の重要な証とされています。復元計画は今後も続き、新しい歴史的価値を持った空間が創造されることが期待されています。なお、訪問者は総門直前で当時の儀式を再現したイベントを楽しむことができます。

円覚寺は、宗教的な歴史だけでなく、地域の文化的なアイデンティティを形成する重要な場所として位置づけられています。これからも、その遺産と知識を次の世代に伝えていく努力が必要です。

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