前田正甫

前田正甫

前田正甫（まえだ まさとし）は、江戸時代前期の越中富山藩の第2代藩主です。

生涯

慶安2年（1649年）に初代藩主・前田利次の次男として生まれました。幼少期は家老の屋敷で過ごし、延宝2年（1674年）に父の死を受けて藩主となりました。

藩主として、正甫は父の方針を継承し、藩制の確立に尽力しました。文武を奨励し、有能な人材を積極的に登用しました。富山藩は金沢藩の支藩という位置づけであり、財政基盤は脆弱でした。そのため、正甫は新田開発や治水工事による生産力向上に加え、製鉄業を興したり、産業を奨励するなど、様々な殖産興業政策を推進し、藩財政の改善に努めました。また、正甫自身が病弱であったことから薬学に興味を持ち、反魂丹などの製薬業を奨励し、越中売薬の基礎を築きました。

天和元年（1681年）には、越後騒動後の高田城受け取り役を務めています。宝永3年（1706年）に58歳で亡くなり、跡を子の利興が継ぎました。

人物像

正甫は名君として知られる一方で、好色家で遊興を好んだという逸話も残っています。城下に大庭園を築き、舟遊びなどを楽しんだと伝えられています。この庭園には富士塚も作られましたが、現存していません。もっとも、これらの散財は幕府を油断させるためのものだったという説もあります。

また、日本における最初期の古銭収集家としても知られ、『化蝶定階』、『化蝶類苑』などの著書を著しました。収集した古銭は後に散逸してしまいましたが、そのコレクションは当時から有名でした。『土芥寇讎記』では、文武両道で法を守り、家臣や領民を大切にする善将として、高く評価されています。

立像

富山藩の繁栄に貢献した名君、また製薬業の祖として、正甫は現在も富山の人々に親しまれています。呉羽山にはかつて衣冠束帯姿の銅像が建立されていましたが、戦時中に供出されました。その後、富山城址公園内に小袖姿の銅像が再建されています。

系譜

父：前田利次
母：八尾 - 柴田氏
正室：英姫 - 酒井忠挙の養女、中川久清の娘
男子：主税
女子：采女
側室：須磨 - 加藤氏
次男：前田利興（1678-1733）
側室：高山氏
側室：松久院 - 藤木氏
男子：前田利由
側室：赤尾氏
女子：前田蘭子
女子：前田逸子
側室：自貞院 - 高日月氏
五男：前田利隆（1690-1744）
側室：正寿院 - 高田氏
男子：空眠
側室：宝泉院 - 高畠氏
女子：前田家子（酒井忠篤正室のち酒井忠英正室）
女子：前田満子
側室：多室 - 高木氏
男子：前田利郷
男子：前田利寛
側室：延寿院 - 川口氏
女子：前田為子（前田利理正室）
側室：木村氏
側室：中川氏
生母不詳の子女
* 女子：前田帯子

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