加世田哲彦

加世田哲彦：栄光から失墜へ - 海軍軍人の数奇な運命

加世田哲彦（かせだ てつひこ）は、明治30年（1897年）11月11日に生まれ、昭和46年（1971年）7月25日に没した、日本の海軍軍人です。彼は非常に優秀な将校でしたが、神政龍神会の結成に関与したことが原因で不敬罪に問われ、その結果、失官という不名誉な結末を迎えることになりました。最終階級は海軍中佐でした。

輝かしい経歴

鹿児島県出身の加世田は、鹿児島二中から海軍兵学校へ47期生として首席で入学しました。在学中には学術優等章を二度も授与されるほどの秀才で、卒業時も次席であり、恩賜を受けるという栄誉に浴しました。同期には、光延東洋、横山一郎、城英一郎などがいます。

大正9年（1920年）に少尉に任官してからの加世田は、霞ヶ浦海軍航空隊附としてセンピル教育団に関わり、その後も第一遣外艦隊参謀、練習艦隊副官、戦艦「長門」分隊長、財部彪副官といった要職を歴任しました。昭和5年（1930年）12月1日には海軍少佐に進級し、海軍大学校甲種30期に進みました。同期には、山本親雄、大石保、長澤浩など、太平洋戦争中に大佐や少将として重要な役割を担った人物たちがいます。

海軍大学校卒業後も、第二遣外艦隊参謀、旅順要港部参謀、軍令部員などの公的な役職を歴任し、順風満帆な軍人生活を送っているかに見えました。

神政龍神会への関与と失墜

しかし、昭和9年（1934年）に加世田は神政龍神会の結成に参加します。この新興宗教団体への関与が、彼の運命を大きく狂わせることになります。昭和10年（1935年）11月には中佐に進級したものの、わずか2か月後には予備役編入となってしまいました。

昭和12年（1937年）、加世田は不敬罪で懲役2年、執行猶予3年の判決を受け、これにより失官という処分を受けました。さらに、昭和19年（1944年）には再び検挙され、従五位の位を返上することを命じられ、勲四等及び昭和六年乃至九年事変従軍記章、大礼記念章（昭和）といった栄典も剥奪されるという、徹底的な没落を経験しました。

加世田哲彦の人生は、その才能と功績によって約束された輝かしい未来から、一転して社会的な地位と名誉を失うという、劇的な変化を遂げました。彼の事例は、組織における個人の行動が、いかに予期せぬ結果をもたらすかを示す教訓として、今もなお語り継がれています。

参考文献

アジア歴史資料センター｢傭聘解約及帰国（5）｣（ref:C08050775400 ）
外山操編『 陸海軍将官人事 海軍篇』芙蓉書房出版 ISBN 4-8295-0003-4
秦郁彦編『日本陸海軍総合辞典』 東京大学出版会
明治百年史叢書第74巻『海軍兵学校沿革』 原書房

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