加治木港

加治木港

加治木港は、鹿児島県姶良市加治木町港町に位置する港湾施設です。鹿児島湾の奥部に位置し、姶良地域への物資輸送拠点として重要な役割を果たしています。5,000トン級の貨物船が接岸できる岸壁のほか、漁船やプレジャーボートが利用する船溜まりも備えており、地元の錦海漁業協同組合の事務所も置かれています。

主な取り扱い貨物

加治木港では、主に姶良地域で使用される砂利やセメントなどの建設資材が取り扱われています。港の周辺にはこれらの資材を保管するためのセメントサイロなどが立ち並んでいます。また、菱刈鉱山で産出される金鉱石の搬出にも利用されており、トラックで港に搬入された後、愛媛県新居浜市の精錬工場へと船で運ばれます。

特殊なケースとしては、種子島宇宙センターで打ち上げられる人工衛星の輸送にも関わっています。国内で製造された人工衛星やロケットは、直接海路で種子島の島間港へ輸送されますが、海外製の人工衛星は航空機で鹿児島空港へ搬入され、そこから加治木港または鹿児島港を経由して島間港へと運ばれます。これは、種子島空港の滑走路が短いため、大型輸送機が着陸できないという事情によるものです。

近年の貨物取扱量は年間110万トン前後で推移しており、2015年度には578隻（542,482総トン）の船舶が発着しました。そのうち、外国商船は22隻（22,694総トン）となっています。

歴史

中世の頃から「加治木浦」として知られていた加治木港は、網掛川の河口付近を中心に利用されていました。当時の港の様子は、摂津国や出雲国と並ぶほどの整備された澪標があったと『三国名勝図会』に記されています。江戸時代初期に加治木で鋳造された「加治木銭」が広く流通していたことは、当時の加治木港の繁栄を物語っています。明治初期に現在の国道10号にあたる道路が開通するまで、姶良地域と鹿児島市を結ぶには白銀坂を越える必要があり、多くの人々や物資は加治木港から海路を利用していました。しかし、鉄道の開通によって港の利用は減少しました。

菱刈鉱山が発見される以前には、山ヶ野金山から産出される金鉱石の取り扱いもありました。明治時代には、金山を経営していた島津氏が金山と加治木港を結ぶ道路を整備し、途中の川には「金山橋」と呼ばれる石橋が架けられました。金鉱石は、護衛付きの馬車で輸送されていたとされています。

第二次世界大戦後、加治木港は引揚者の上陸港として指定されました。鹿児島港が戦災で大きな被害を受けたため、代替地として外地引揚民加治木事務所が設置され、1945年10月29日から12月8日まで機能しました。引揚者は、網掛川の右岸側の須崎地区にあった臨時の浮桟橋から上陸し、加治木療養所（後の国立病院機構南九州病院）に収容されました。しかし、マラリアや栄養失調により、約300人が加治木滞在中に亡くなり、うち約200人は身元不明として吉祥寺墓地に埋葬されました。加治木港には、合計2万6780人が上陸し、記念碑が建立されています。

1972年7月15日には、加治木港と鹿児島・指宿港を結ぶ空港ホーバークラフトが就航しましたが、1977年に廃止されました。現在でも、ホーバークラフトが使用していた斜路が残されています。

1993年8月には、平成5年8月豪雨によって陸上交通網が寸断された際、加治木港と鹿児島港を結ぶ臨時の旅客船が運航されました。この災害を教訓に、災害時の代替路として海上交通を利用する体制整備が進められています。

2000年12月からは、鹿児島湾奥部における加治木港の機能分散のため、隼人港に2,000トン級貨物船が接岸できる岸壁を整備する工事が始まり、2009年度に完成する予定となっています。

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