加瀬沼

加瀬沼（かせぬま）

加瀬沼は、宮城県の利府町、多賀城市、塩竈市にまたがる灌漑用のため池です。三方を松島丘陵から続く丘陵に囲まれた谷に、アースダム形式で築堤されています。総貯水量は27万立方メートルで、農業用水として重要な役割を果たしています。漁業権は設定されていません。

地理

加瀬沼の水は勿来川（名古曽川）に流れ込み、砂押川、貞山運河を経て仙台湾へと注ぎます。

歴史

加瀬沼の歴史は古く、慶長年間（1596年 - 1615年）の築堤説と、寛文事件で殺害された伊達宗重による築堤説があります。いずれにしても、約400年前に造られたと考えられています。

大正時代初期から昭和38年（1963年）までは、塩竈市の上水道水源としても利用されていました。平成4年（1992年）には水門破損により水量が激減する被害がありましたが、平成7年（1995年）から平成9年（1997年）にかけて改修整備が行われました。

昭和58年度（1983年度）からは加瀬沼公園の整備が進められ、平成22年（2010年）には農林水産省の「ため池百選」に選定されています。

自然

加瀬沼は豊かな自然に恵まれ、多様な生物が生息しています。

沼の生物

水辺にはマコモが繁茂し、水面にはヒシ、ガガブタ、ヒメシロアサザが浮かびます。水中にはクロモ、ハゴロモモ、エビモなどが生育しています。

「多賀城の自然と野鳥を守る会」による冬季の餌付けが行われており、渡り鳥の飛来地としても知られています。コイ、ゲンゴロウブナなどの魚類が生息し、1990年代以降にはオオクチバスも確認されています。平成4年の水門破損後には、タイリクバラタナゴやタナゴが一時的に減少しました。

テナガエビ、モノアラガイ、マルタニシ、ドブガイなども生息しています。

周辺の緑地

加瀬沼周辺は、市街化が進む中でもまとまった面積の雑木林が残されており、昭和48年（1973年）に宮城県の緑地環境保全地域に指定されました。クリ・コナラ林を中心に、アカマツ、スギ、ヒノキなどが植えられ、約70種類の樹木が確認されています。

哺乳類ではホンドギツネ、ホンドタヌキ、ニホンリス、トウホクノウサギなどが生息し、昆虫類では25種のトンボ、7種のセミ、51種のチョウが確認されています。

沼の西側には、県立都市公園である加瀬沼公園（杜の都信用金庫「モリリン加瀬沼公園」）が整備されています。

脚注

ため池百選

参考文献

• - 多賀城市史編纂委員会『多賀城市史』第1巻（原始・古代・中世）、多賀城市、1997年。

外部リンク

• - 加瀬沼緑地環境保全地域（宮城県）
• - 宮城東部衛生処理組合

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