加藤吉成

加藤 吉成（かとう よししげ）

安土桃山時代から江戸時代初期を生きた武将、加藤吉成は、永禄11年（1568年）、摂津国伊丹の地に生を受けました。父は加藤重徳、母は伊丹城主の娘でした。黒田一成、そして黒田孝高の次男・熊之助と共に玄界灘で溺死したとされる吉松は実弟にあたります。

母方の伊丹氏は、室町幕府15代将軍・足利義昭を支持しましたが、織田信長によって義昭が没落すると、織田氏家臣の荒木村重に降り、その家臣団に加わりました。この頃、彼らは加藤姓に戻ったといいます。しかし、天正7年（1579年）、村重が織田氏に対し謀反を起こし、有岡城の戦いの末に城を捨てて失脚すると、吉成は父・重徳と共に宇喜多氏に仕えることになりました。吉成は成長とともに、父譲りの気風を受け継ぎ、知略と武勇に長けた武将として頭角を現しました。

天正15年（1587年）に行われた豊臣秀吉の九州征伐には、父と共に主君・宇喜多秀家に付き従い参戦し、戦功を立てました。ところが、秀家からこの功績を十分に認められなかったため、重徳と吉成は俸禄を返上。家族や母の弟にあたる郡宗保一族と共に、故郷である摂津伊丹に戻り、豊臣秀吉の馬廻衆であった親族の伊丹忠親のもとに身を寄せました。

翌天正16年（1588年）、肥後国宇土城主・小西行長から父・重徳に仕官の誘いがありました。しかし、重徳は自身の高齢を理由に吉成を推挙し、吉成は行長の家臣となり、2000石の所領を与えられました。吉成は文禄・慶長の役にも従軍し、数々の戦功を挙げた結果、家老に任じられ、その所領は5000石へと拡大しました。さらに、行長からの信任厚く、その養女（喜多嶋氏）を正室に迎えています。

しかし、慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは、小西行長が属する西軍が東軍に敗北しました。吉成は東軍に与した実弟・黒田一成と対面し、その計らいによって助命されました。その後、父・重徳と共に宇土で潜伏生活を送り、一時的に浪人となりました。

慶長6年（1601年）、筑前福岡藩の大老となっていた実弟・黒田一成は、主君である黒田長政に対し、父と兄を藩に迎え入れることを強く願い出ました。長政の父である黒田孝高は、かつて有岡城の戦いで幽閉されていた際、重徳に世話になった恩義があったため、長政は父・重徳とその子である吉成の受け入れを承諾。吉成には中老という重要な役職を与え、当初1000石、後に2000石に加増された所領を与えました。

寛永9年（1632年）、第2代藩主・黒田忠之の時代にさらに加増され、俸禄は3000石となりました。黒田騒動の後には、盛岡藩に預けられた栗山利章の旧領地であった、朝倉志波の麻底良城（左右良城とも呼ばれる）一帯の統治を任されています。

寛永10年（1633年）5月25日、久留米藩で銀守番を務めていた従兄、郡太兵衛の邸宅を訪問中、談笑の最中に突然倒れ、急死しました。享年66歳。墓所は加藤家の菩提寺である節信院に営まれました。

その子孫には、幕末期に福岡藩で筑前勤王党の中心として活動した加藤司書がいます。

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