加藤司書

加藤司書：激動の幕末を駆け抜けた福岡藩士

加藤司書（かとう ししょ）は、江戸時代末期（幕末）の福岡藩家老で、筑前勤王党の首領格として知られています。名は三太郎、後に徳成と改めました。月形洗蔵らと共に尊皇攘夷運動の中心人物として活躍しましたが、その急進的な改革が藩内の対立を招き、悲劇的な結末を迎えることとなります。

生涯

文政13年（1830年）3月5日、福岡藩中老職の加藤徳裕と側室の間に生まれました。11歳の時、養子であった義兄が実家に戻ったため、加藤家11代目当主となり、福岡藩の中老の位に加わりました。

嘉永6年（1853年）、ロシアのプチャーチンが長崎に来航した際には、長崎港警備を指揮し、幕府外国奉行の川路聖謨に協力しました。水と炭を求めるロシアに対し、水のみを与える対応をしました。

安政3年（1856年）には藩の執政に就任し、尊皇攘夷派の中心人物として頭角を現します。藩主・黒田長溥が西洋式兵制の導入を説いた際には、攘夷派としてこれを拒否しました。司書は蘭学を軽視し、国学に傾倒し、尊皇攘夷を強く主張しました。

元治元年（1864年）には、藩主を匿うための避難所として犬鳴谷に御別館の建設を提案しました。禁門の変後、長州征討の際には、長州藩との周旋役として幕府軍との交渉にあたりました。薩摩藩の西郷吉之助と共に総督に謁見し、長州征討軍の解散を実現させました。これにより、長州藩の処分は三家老の切腹のみで決着し、司書は感激のあまり歌を詠んだと伝えられています。また、長州にいた三条実美ら五卿を大宰府に移し、筑前は勤王志士たちのメッカとなりました。司書は西郷吉之助や高杉晋作と密談し、薩長同盟の実現に尽力しました。

慶応元年（1865年）には、征長軍解兵の功績により家老に昇進しました。しかし、その後の藩政改革は急進的であり、仏教廃止や寺院の打ち壊しなどを主張したため、藩内の反発を招きました。また、勤王党の増長は藩主の専制権を侵すまでに至りました。

黒田長溥は勤王党と保守派を対決させ、藩論を「公武一和」に転換させました。勤王党は内紛を起こし、司書が藩主を幽閉しようとしているという噂が流れ、佐幕派からの非難を招きました。幕府が長州再征討を決定したことで、勤王派の功績は否定され、佐幕派が復権しました。

司書は黒田溥整と連名で建白書を提出しましたが、藩主の怒りを買い、クーデター計画を疑われました。司書は家老職を辞任し、その後、勤王党の一斉検挙（乙丑の獄）が行われ、司書は切腹を命じられました。享年36歳でした。

人物

司書は文武両道に優れ、特に武術に長けていました。相撲では藩内で敵なしと言われ、弓術や馬術も堪能でした。非常に負けず嫌いな性格で、一度決めたことは徹底的にやり遂げるまで諦めませんでした。また、大食漢としても知られており、茶席の懐石料理よりも鍋料理を好んだとされています。大酒飲みでもあり、長崎奉行との酒席では、一升の酒を平然と飲み干したと伝えられています。

エピソード

司書は製鉄事業にも関わり、犬鳴谷に鉄山を開業しました。また、有事の際の避難所として犬鳴御別館を建設しました。現在でも、司書ゆかりの地として、ダム湖や橋にその名が残されています。

司書は「皇御国（すめらみくに）の武士（もののふ）」という歌の作者としても知られています。この歌は小学校唱歌や軍歌、黒田節の一節としても知られています。

戦前には西公園に銅像が建てられていましたが、戦時中に供出され、現在は台座のみが残っています。福岡市中央区には、司書の邸宅跡が残っています。

没後

司書の妻・安子は夫の死を悲しみ、絶食の末に亡くなりました。長男・堅武は、西南戦争に呼応して福岡の変を起こし、処刑されました。

明治24年（1891年）には、正五位を追贈されました。

加藤家の家系

加藤家の家祖は、福岡藩祖・黒田孝高を救出した加藤重徳とその長男・吉成です。重徳の家系は摂津国の豪族・伊丹氏の支流とされています。加藤家は代々福岡藩の重臣として活躍しました。

まとめ

加藤司書は、幕末の激動期に尊皇攘夷運動に身を投じ、福岡藩を牽引した人物です。その急進的な改革は悲劇を招きましたが、彼の行動は幕末維新の動乱を語る上で欠かせないものとなっています。彼の生涯は、時代の変化に翻弄されながらも、信念を貫き通した一人の武士の姿を今に伝えています。

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