加藤建夫

加藤建夫：伝説の戦闘機隊長

加藤建夫（かとう たてお）は、1903年（明治36年）9月28日に北海道で生まれ、1942年（昭和17年）5月22日に戦没した、大日本帝国陸軍の軍人、そして卓越した戦闘機操縦者です。最終階級は陸軍少将。その功績から、二階級特進と異例の功二級金鵄勲章を授与されました。特に太平洋戦争初期には、自ら率いる「加藤隼戦闘隊」を駆り、南方作戦において目覚ましい戦果を挙げ、その武勇と人柄から「軍神」と称えられました。

生い立ちと軍人への道

加藤は、屯田兵の父と母の末子として誕生しました。父は日露戦争で戦死し、兄は陸軍士官学校を優秀な成績で卒業したものの、若くして病没。加藤は、幼くして父と兄を失いながらも、彼らの背中を追い、1918年に仙台陸軍幼年学校に入学。その後、陸軍士官学校、陸軍大学校へと進み、軍人としての道を歩み始めました。

パイロットとしての才能開花

1925年、陸軍士官学校を卒業後、加藤は当初歩兵科に配属されますが、かねてより興味のあった航空兵科へ転科。1926年には所沢陸軍飛行学校で操縦を学び、卒業時にはその優秀な成績から恩賜の銀時計を授与されました。1937年には、日中戦争に従軍し、初陣で4機を撃墜するなどの戦果を挙げ、部隊感状を受けるなど、その卓越した操縦技術と指揮能力を発揮しました。1939年には陸軍大学校を卒業し、その後は陸軍航空総監部で勤務。ドイツへの視察旅行では、最新鋭の戦闘機メッサーシュミットBf109に搭乗する機会を得て、その性能を肌で感じました。

「加藤隼戦闘隊」の誕生と南方での活躍

1941年、加藤は飛行第64戦隊長に着任。同戦隊は、加藤がかつて中隊長を務めていた部隊を基に編成され、新鋭の一式戦闘機「隼」を装備。ここに「加藤隼戦闘隊」が誕生しました。太平洋戦争開戦後、加藤は自ら「隼」に搭乗し、空中指揮・戦闘において卓越した手腕を発揮。南方作戦では、パレンバン空挺作戦において、イギリス軍機を撃墜するなど、その名を轟かせました。加藤率いる第64戦隊は、終戦までに日本軍最多となる7枚の感状を授与されています。一式戦「隼」は、太平洋戦争緒戦において、連合軍機に対して圧倒的な戦果を上げました。

壮絶な最期と「軍神」としての顕彰

1942年5月22日、加藤はビルマ戦線のアキャブ飛行場において、イギリス軍機の攻撃を受け、帰還不能と悟ると、自ら機を反転させ、敵陣に突入。壮絶な自爆を遂げました。享年38歳。戦死後、その功績を称えられ、二階級特進と異例の功二級金鵄勲章が授与されました。また、加藤の武勇は広く国民に知れ渡り、「軍神加藤少将」として称えられ、その活躍は、映画や歌にもなり、国民的英雄として語り継がれています。

人物像

加藤は、ユーモアがあり、部下思いの人物でした。身長約170cmと当時としては長身で、彫りの深い顔立ちをしていました。困難な任務には自ら率先して挑み、部下からの信頼も厚く、そのストイックな武士道精神から「加藤教」と呼ぶ者もいたほどです。また、操縦者としても卓越した能力を持ち、鹵獲した敵機も短期間で乗りこなしたと伝えられています。敵味方関係なく戦没者を弔うなど、その人間性を示すエピソードも残っています。

加藤は、写真撮影を趣味としており、愛用のカメラを常に持ち歩いていました。スポーツにも造詣が深く、特にスキーの腕前は確かでした。また、風呂好きで、前線でもドラム缶風呂を楽しむなど、その人間味溢れる一面も持ち合わせていました。常に死を覚悟しながらも、生きている限り心身を磨き、社会に貢献せねばならないという信念を持っていました。

加藤建夫の遺産

加藤建夫は、卓越した操縦技術、優れた指揮能力、そして部下を思う温かい心で、多くの人々に感銘を与えました。その勇ましい姿は、今もなお、多くの人々に語り継がれ、その精神は、後世に大きな影響を与え続けています。

主な経歴

1903年：北海道旭川にて誕生
1918年：仙台幼年学校入学
1925年：陸軍士官学校卒業
1927年：所沢陸軍飛行学校卒業
1937年：日中戦争に従軍
1941年：飛行第64戦隊長に着任
1942年：ビルマ戦線で戦死

栄典

1942年：正五位・従四位、功二級金鵄勲章

関連作品

映画『加藤隼戦闘隊』
映画『あゝ陸軍 隼戦闘隊』
アニメ『アニメンタリー 決断』
楽曲『空の軍神』
* 楽曲『軍神加藤少将』

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