加藤明英

加藤明英

加藤明英（かとう あきひで）は、江戸時代前期の大名で、水口藩加藤家の4代目にあたります。近江水口藩の第2代藩主、後に下野壬生藩の初代藩主となりました。

生涯

水口藩時代

承応元年（1652年）に水口藩初代藩主・加藤明友の長男として誕生。寛文5年（1665年）に4代将軍・徳川家綱に拝謁しました。貞享元年（1684年）に家督を相続し、翌年には叙任されています。水口藩主としては善政を敷いていたと伝えられています。

元禄2年（1689年）には奏者番と寺社奉行を兼任し、5000石を加増され2万5000石の大名となりました。さらに元禄3年（1690年）には若年寄に就任しています。

壬生藩時代

元禄8年（1695年）に下野壬生へ移封されました。水口藩時代には文武両道の名君と称えられた明英ですが、壬生藩に移ってからは一転、年貢の厳重な取り立てを行うなど、緊縮財政を敷きました。この苛政が原因で、「七色の掛物」と称される百姓一揆が勃発しています。

正徳元年（1711年）に若年寄を辞任し、翌年死去。享年61。後継者としていた弟で養子の明治が先に亡くなっていたため、甥にあたる明治の長男・嘉矩が跡を継ぎました。

逸話

5代将軍・徳川綱吉に実子がいなかったため、後継者問題が浮上していました。宝永元年（1704年）12月5日、綱吉の甥である甲府藩主・徳川綱豊（後の家宣）が後継者に内定します。その前日、明英は綱豊に対し、西の丸の絵図面と大鯛2匹を贈りました。

当時、明英は若年寄として幕政に参画しており、綱吉からの信頼も厚く、重要情報を入手しやすい立場にありました。しかし、この贈り物を綱豊は「次期将軍への取り入りのための贈賄」と受け止め、また、軽率に城の図面を渡す行為は軍事機密の漏洩であると問題視しました。公になっていない情報を職務上知り得たからといって、個人的な目的で使用すべきではないという判断もありました。

この一件により、家宣は明英を遠ざけ、明英自身も自身の軽率さを嘆いたとされています。この事件が原因で、明英は出世を諦め政道を誤り、発狂して亡くなったという説も残っています。実弟の溝口政親も暗愚で酒乱のため改易されており、祖父の明成も暗愚で暴虐という伝承があるなど、不幸な逸話が目立つ家系でした。

系譜

父：加藤明友
正室：本多康長の娘
子女
長女：木下俊量正室
次女：三宅康徳正室
三女：本多忠統婚約者
四女
養子
加藤明治（実弟）
加藤嘉矩（明治の長男）

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