加藤桜老

加藤桜老（かとう おうろう）

加藤桜老（1811年 - 1884年）は、江戸時代後期から明治時代にかけて活躍した儒学者です。常陸国笠間藩（現在の茨城県笠間市）に生まれ、尊王攘夷運動に身を投じ、多くの志士たちと交流を深めました。その学識と行動力は、幕末の動乱期において大きな影響を与えました。

生い立ちと学問

文化8年（1811年）、水戸藩士の家に生まれた桜老は、幼少の頃より学問に励みました。7歳の時、外祖父である笠間藩士・加藤信義に預けられ、加藤家の養子となります。加藤家は代々学者の家柄であり、桜老は幼い頃から学問に親しむ環境に育ちました。

14歳で正式に加藤家の養子となった桜老は、藩校時習館の教授である森田桜園のもとで本格的に儒学を学び始めます。18歳で笠間藩に出仕しますが、その才能を認められ、藩士としての職務を免除され、儒学修行に専念することを命じられます。同時に、藩校時習館の都講（講師）にも任命され、若くしてその学識を高く評価されました。

その後、水戸藩の会沢正志斎、藤田東湖のもとで指導を受け、さらに足利学校や各地を遊学し、見聞を広めます。江戸では昌平坂学問所で林述斎、佐藤一斎に儒学を学び、その他にも兵術、砲術、雅楽など、幅広い分野を修めました。こうした多様な学びと、諸藩の有志との交流を通じて、桜老は独自の思想と学問を深めていきました。

寅年の騒動と隠居

天保13年（1842年）、笠間藩で藩主相続をめぐる騒動が起こります。桜老は、家老の専制政治を批判し、藩政改革を訴えましたが、騒動の責任を問われ、処罰を受けました。その後、養父の死去により家督を相続しますが、藩政への不満から出仕を拒み続け、嘉永4年（1851年）に隠居を命じられます。

十三山書楼での志士との交流

隠居後、桜老は自宅近くに「十三山書楼」という隠居所を構えます。この書楼は、教育の場「詠帰塾」としても開放され、多くの志士たちが桜老に教えを請いに、あるいは談義をするために訪れました。水戸藩の藤田小四郎、会津藩の秋月悌次郎、長州藩の高杉晋作など、多彩な人材が十三山書楼に集まり、桜老は彼らと交流しながら、情報収集と国論の形成に尽力しました。

長州藩校明倫館の教授

文久2年（1862年）、桜老は長州藩主・毛利敬親の要請を受け、長州藩校・明倫館の教授に就任します。江戸の長州藩邸で講師を務めた後、京都に移り、八月十八日の政変を経て長州へ。明倫館で教鞭を執る傍ら、『忠節時蹟』の編纂や、『藩兵備考』『謀野草議』『学術論』などの時局論を執筆しました。また、山口に私塾「詠帰塾」を開き、水戸学を講義するなど、後進の育成にも力を注ぎました。

晩年と死

明治維新後、桜老は明治新政府から軍務官御用掛を命じられ、その後教部省に入省。退官後も教育論を執筆するなど、国事や教育に対する情熱を燃やし続けました。明治17年（1884年）、東京で死去。74歳でした。

加藤桜老は、激動の幕末期において、学問と行動をもって時代を切り開いた人物です。その思想と行動は、多くの人々に影響を与え、日本の近代化に貢献しました。

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