加賀美氏

加賀美氏について

加賀美氏（かがみし）は、日本の氏族の一つで、鏡、各務、加々美などとも表記されます。そのルーツは複数あり、主に美濃国各務郡を本拠とする各務勝流、甲斐国巨摩郡を発祥とする清和源氏武田氏流、そして同じく甲斐源氏である清和源氏一条流の3つの系統に分かれます。それぞれの系統が独自の歴史と家紋を有し、各地に広がりを見せました。

各務勝流の加賀美氏

美濃国各務郡各務郷を発祥とする各務勝流の加賀美氏は、同郡における名門として知られています。『姓氏家系大辞典』によれば、勝（すぐり）の姓（かばね）は百済からの渡来系氏族に多く見られることから、美濃各務氏もその流れを汲むのではないかと考察されています。この一族は甲斐国中巨摩郡に移住したことで、各務や鏡といった地名が生まれ、後に加賀美と表記されるようになったとされています。平安時代後期には、清和源氏武田氏流の加賀美氏が登場した影響から、各務勝流の加賀美氏も清和源氏を称するようになったと考えられています。この氏族は『寛政重修諸家譜』にも記載されており、家紋としては「中太松皮菱」「割菱」「五七梧桐」「王文字」などが用いられています。

清和源氏武田氏流の加賀美氏

甲斐国巨摩郡加賀美庄を発祥とする清和源氏武田氏流の加賀美氏は、源朝臣を本姓としています。この一族は、甲斐源氏の祖とされる新羅三郎義光の孫・源清光の子である遠光を祖としています。遠光は武田信義の異母兄弟であり、平安時代後期に甲府盆地各地に土着した甲斐源氏の一族の中で、加賀美郷（現在の山梨県南アルプス市加賀美）に拠点を構え、加賀美姓を名乗りました。遠光は滝口武者であり、承安元年（1171年）には怨霊を鎮めた功績により高倉天皇から不動明王像を賜り、これは加賀美荘内の大聖寺（身延町）に伝えられています。治承・寿永の乱では目立った活躍はなかったものの、源頼朝の元に参じ、鎌倉幕府では御門葉として信濃守に任ぜられています。また、遠光の娘（大弐局）は源頼家の養育に携わっています。文治5年には遠光は子息と共に奥州合戦に参加しています。加賀美氏の嫡流は四男光経に引き継がれましたが、長男の秋山光朝は秋山氏、次男の小笠原長清は小笠原氏、三男の南部光行は南部氏、五男の於曽経行は於曽氏といった庶流が誕生し、甲斐国だけでなく全国に広がりました。南アルプス市加賀美にある法善寺は、遠光の屋敷跡とされています。

清和源氏一条流の加賀美氏

清和源氏武田氏流と同じく甲斐源氏に属しますが、加賀美遠光の子孫とは異なる系統の氏族です。『武田系図』によると、一条信長の子孫である宗信が加々美氏を称したとされています。

甲斐国の加賀美氏

甲斐国には、各務勝流、清和源氏武田氏流、そして一条流の子孫と思われる加賀美氏が存在しました。下小河原の加賀美氏からは、江戸時代に国学者の加賀美光章が出ています。また、畔村の住吉神社社家である加賀美氏や、西保村の加賀美氏に関する記述が『甲斐国志』に見られます。住吉神社社家からは、海軍軍医総監となった加賀美光賢を輩出しています。これらの加賀美氏も、「中太松皮菱」「割菱」「五七梧桐」「王文字」などの家紋を使用していたとされています。

武蔵国の加賀美氏

『新編風土記』には、甲斐から落ち延びてきた加賀美正光が武蔵国橘樹郡高石村に住んでいたことが記されており、正光は後に徳川家康に仕えたとされています。

安芸国の加賀美氏

安芸国には、安芸守護となった武田氏に従って移り住んだ加賀美氏の一族が存在します。『芸藩通志』には、安芸武田氏の家臣となった清和源氏義光流の加賀美宗遠が、嘉吉年間（1441年～1444年）に甲斐から移り住み、その子孫が代々豊田郡和木村に住んだと伝えられています。


このように、加賀美氏は多様なルーツと歴史を持つ氏族であり、各地で様々な役割を果たし、その名を歴史に刻んでいます。

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