勝瑞城

勝瑞城：阿波国の中心として栄華を誇った城

勝瑞城は、現在の徳島県板野郡藍住町勝瑞に位置する平城です。鎌倉時代から安土桃山時代にかけて、阿波国における政治、経済、文化の中心地として繁栄し、「天下の勝瑞」と称されました。2001年には平城跡と居館跡が国の史跡に指定され、その後の発掘調査で確認された部分が2007年に追加指定を受けています。

城の概要

勝瑞城は、旧吉野川の南岸の自然堤防上に築かれました。東側には今切川、南側には湿地帯が広がり、天然の要害としての役割も果たしていました。当時は海岸線が現在よりも内陸部に位置していたため、水上交通の要所としても機能し、京畿地方との往来も容易でした。

この地は、暴れ川として知られる吉野川の支流が多いため、平地の要塞というよりも、守護の居館、政庁としての性格が強い城でした。城の規模は広大で、室町時代の守護所の様相をよく伝える貴重な遺構となっています。城下町は中世地方都市としては類例を見ないほど繁栄し、細川氏9代、三好氏3代にわたり、約240年間この地を拠点としていました。

勝瑞城の歴史

築城年代には諸説ありますが、有力な説としては、承久の乱の後、阿波守護となった小笠原長清が守護所を設けたのが始まりとされています。その後、南北朝時代には、細川頼之が秋月城から勝瑞城に移り、阿波守護細川氏・三好氏の歴史が始まりました。

細川頼之は、足利義満を補佐し幕府の実権を握り、京の屋敷を「管領屋形」と称したのに対し、勝瑞城は「阿波居館」と呼ばれました。特に7代城主の細川成之は、東山文化を代表する文化人であり、公家、僧侶、学者など多くの文化人が集まり、城下は京都と直結した文化都市として発展しました。

戦国時代に入ると、細川氏の家督争いが激化し、永正の錯乱などの事件を経て、三好氏が台頭します。三好元長は、足利義維、細川晴元を擁して勢力を拡大し、細川高国を破り、細川晴元を管領職に就けました。その後、三好長慶が実権を握り、阿波方では、細川氏之が勝瑞城を取り仕切り、三好実休が兵権を掌握しました。

しかし、細川氏之は小少将という美女に溺れ、防備を怠ったため、1552年に三好実休に謀反を起こされ、自害に追い込まれました。ここに阿波方細川氏は滅亡し、その後、小少将は三好実休の夫人となり「大形殿」と名を改めました。

安土桃山時代から廃城へ

三好氏が織田信長の勢力によって衰退していくと、勝瑞城でも三好長治の信望が衰え、重臣たちが離反。1577年には、細川真之を奉じる小笠原成助らに追われ、三好長治は自害しました。その後、長宗我部元親の侵攻を受け、1582年、中富川の戦いで十河存保が敗走し、勝瑞城は廃城となりました。

長宗我部軍によって破却された勝瑞城は、徳島城築城の際に石塁や遺構の多くが持ち運ばれたと伝えられています。約240年にわたり続いた勝瑞城の歴史は、ここに幕を閉じました。

城郭の特徴

勝瑞城の城域は、現在の藍住町の東勝地と西勝地を合わせた部分とほぼ一致しています。中世都市を思わせる地割が残り、北から西にかけては土塁が築かれ、旧吉野川の洪水に備えていました。南側は堀で区切られ、「南千間堀」と呼ばれる堀跡も残っています。

勝瑞城は、中世の城郭でありながら、大規模な城下町を形成していました。東西約2km、南北1.5kmに及ぶ広大な範囲には、多くの寺社、市場、武家屋敷、町屋などが立ち並び、賑わいを見せていました。

発掘調査で見つかった遺構

発掘調査によって、城域の中央部に位置する見性寺が、本丸の一部であることが判明しました。また、三好実休の居館跡も発見され、濠や庭園跡などが確認されています。特に、居館跡から発見された池庭は、国内最大級の規模を誇り、「つ」の字のような形をした美しい庭園であったことが分かっています。

その他にも、枯山水庭園や瓦組井戸、紀年銘入りの卒塔婆など、様々な遺構や遺物が出土しており、当時の生活や文化を知る上で貴重な資料となっています。

現在の勝瑞城跡

現在、勝瑞城跡は史跡公園として整備され、歴史を感じさせる空間となっています。見性寺には、三好氏歴代の墓が移され、静かに歴史を語りかけています。発掘調査は現在も継続して行われており、新たな発見が期待されています。

勝瑞城跡は、JR勝瑞駅から徒歩約10分とアクセスも良く、歴史好きにはたまらないスポットです。ぜひ一度、足を運んでみてください。

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