北川丞

北川丞：爆弾三勇士として散った佐々村出身の軍人

北川丞（きたがわ すすむ）は、1910年（明治43年）3月8日に生まれ、1932年（昭和7年）2月22日に戦死した大日本帝国陸軍の軍人です。最終階級は工兵伍長。長崎県北松浦郡佐々村（現・佐々町）で生まれ育ちました。

生い立ちと入隊

佐々村大字市瀬江里免（現在の佐々町江里免）の農家、北川権作の次男として生を受けました。北川家の先祖は平戸藩に仕えた武士であり、父・権作は日清戦争、日露戦争に従軍した経験を持つ人物でした。しかし、自身が戦果を上げられなかったことを悔やみ、息子の丞を立派な軍人にすることを願っていましたが、丞が8歳の時に肺炎で亡くなってしまいます。

1924年に佐々尋常高等小学校を卒業後、補習学校後期に入学するも1年で中退。兄と共に母を助け農業に従事しました。1926年には実業補習学校に進みますが、この時も中退しています。丞は次男であったため、将来を考え林業の道に進むこととなり、18歳の時に相浦町で住み込みで働いていました。そして20歳の時、壮丁検査で甲種合格を果たし、1931年に久留米工兵第18大隊に入営しました。

第一次上海事変と壮絶な最期

1932年2月6日、一等兵として巡洋艦「神通」に乗船し、第一次上海事変に出征します。そして同年2月22日、上海の廟行鎮において、敵の鉄条網を破壊する作戦に参加。北川は、江下武二、作江伊之助と共に破壊筒を抱え、鉄条網へ向かって突進し、爆死しました。この3名の兵士は「爆弾三勇士」として、国民的な英雄として祀り上げられることとなりました。

故郷に残る顕彰碑

故郷である佐々町には、三柱神社に北川の銅像が建立されています。台座には「平和之礎」と記されています。戦前には別の銅像が立っていましたが、金属類回収令によって供出され、現在の銅像は東京都港区の青松寺にあった三勇士の銅像の一部を移築したものです。また、生家には「肉弾三勇士北川伍長記念館」が併設されており、その生涯を偲ぶことができます。

北川丞は、短い生涯を軍人として捧げ、爆弾三勇士の一人としてその名を歴史に刻みました。彼の故郷には、今もなおその功績を称える記念碑が残されています。


参考資料
小笠原長生著『忠烈爆弾三勇士』実業之日本社、1932年4月12日発行
護国業書『爆弾三勇士』軍事教育刊行会、1932年4月10日発行
* 『平戸・田平・生月れきし発見』NPO法人長崎人権研究所、2013年3月1日発行

もう一度検索