北野の長者

北野の長者：菅原氏を統べる要職の解説

北野の長者とは、菅原氏の氏長者の通称であり、その名称は菅原道真を祀る北野天満宮に由来します。菅原氏の公家の中でも最も上位の者がこの職に就きましたが、藤氏長者や源氏長者とは異なり、原則として終身制でした。

北野の長者の特徴

北野の長者の人事は、前任者の死去が大きく影響しました。例えば、東坊城和長は、当時の長者であった高辻長直が能力に欠けるにもかかわらず長者の地位に就いたことに不満を抱いていました。長直は、前任の唐橋在治の死去後、その子である唐橋在数よりも家格が上であったため、長者の座を射止め、33年もの間その地位を保持しました。

北野の長者の特筆すべき点として、各地の天満宮が菅原道真の末裔である菅原氏を、社領の本家または領家として位置づけていたことが挙げられます。そのため、社領の管理や、それらに関する朝廷や幕府への働きかけも、北野の長者の重要な役割でした。北野の長者は、戦国時代に至るまで天満宮領荘園の本所としての立場を維持し続けました。

北野の長者の変遷

中世前期においては、菅原氏の中でも嫡流とされていた唐橋家が長者に就く可能性が高い状況でした。しかし、唐橋在数が長者に就くことなく九条政基父子によって殺害されると、唐橋家は没落し、長者を輩出することがなくなりました。その後は、高辻家、五条家、東坊城家から長者が輩出されるようになりました。

まとめ

北野の長者は、菅原氏の氏長者として、北野天満宮との繋がりを背景に、社領の管理や朝廷・幕府への働きかけなど、重要な役割を担っていました。その地位は原則終身制であり、中世前期には唐橋家が、その後は高辻家、五条家、東坊城家が長者を輩出するなど、時代とともに変遷していきました。

参考文献
伊藤慎吾『室町戦国期公家社会と文事』三弥井書店、2012年。ISBN 978-4-8382-3218-5。
井原今朝男『室町期廷臣社会論』塙書房、2014年。ISBN 978-4-8273-1266-9。

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