唐橋家

唐橋家：栄華と衰退を辿った公家・華族

唐橋家は、名門・菅原氏の流れを汲む由緒ある家系です。菅原氏高辻家の支流にあたり、公家としては半家の家格、華族としては子爵の爵位を有していました。その歴史は古く、贈従一位菅原定義の四男を祖とする一族は、当初は坊城を称していましたが、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて、当主である唐橋有雅が唐橋を名乗るようになったとされています。家名の由来は、京都の唐橋村を所領としたことにあります。

唐橋家は、菅原氏の嫡流とみなされた時期もあり、北野の長者（氏長者）を数多く輩出しました。大内記、文章博士、大学頭などの要職を歴任し、権大納言を極官としていました。この時代、唐橋家は大きな影響力と権勢を誇っていたと言えるでしょう。

しかし、室町時代には転機が訪れます。九条家の家司となっていた唐橋家は、明応5年（1496年）、九条家の経営問題を巡って対立が激化。その結果、当主の唐橋在数が九条政基・尚経父子によって殺害されるという悲劇に見舞われました。この事件は、菅原氏一族の激しい抗議を招き、九条父子には後土御門天皇の勅勘が下されましたが、唐橋家にとっては大きな痛手となりました。この事件以降、唐橋家から氏長者や侍読といった要職に就く者は現れなくなり、徐々に衰退へと向かうことになります。

江戸時代に入ると、唐橋家は有職故実に深い関心を示し、積極的に研究に取り組みました。その成果として、『冠儀浅寡抄』（元服に関する記述）、『畢用録』（笏に関する記述）、『宿徳装束抄』（老人の装束に関する記述）、『布衣群色便蒙抄』（狩衣に関する記述）など、多くの貴重な著書を残しています。これらの書物は、当時の装束や儀式に関する貴重な情報源として、現在も高く評価されています。家格は半家、外様で、九条家の家礼に属し、家業は紀伝道、家禄は182石でした。

明治維新後、華族制度が成立すると、唐橋家は公家として華族に列せられました。明治17年（1884年）には華族令の施行により華族の五爵制が導入され、唐橋在綱が子爵に叙爵されました。これは、大納言への直任がない旧堂上家としての特例措置でした。その後、養子の在正が爵位を継承し、茨木県庁に勤務した後、貴族院の子爵互選議員を務めました。さらに、その子である在知の代には、唐橋子爵家の邸宅が京都市上京区寺町通りにありました。

唐橋家は、栄華を極めた時代と、事件による衰退という、対照的な歴史を歩んできました。しかし、その歴史の中で培われた有職故実に関する知識や、残された貴重な文献は、日本の歴史・文化を理解する上で貴重な財産となっています。

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