千代田館

千代田館（浅草）の歴史

千代田館は、1911年（明治44年）11月に東京市浅草区浅草公園六区三号地（現在の東京都台東区浅草1丁目42番4号）に開業した映画館です。電気館の北隣に位置し、かつては剣舞で知られた清明館、大神楽で知られた明治館があった場所に建てられました。

横田商会から日活へ

開業当初は、京都の横田商会（現在の日活の前身の一社）のフラッグシップ館でした。1912年（大正元年）9月10日、横田商会がM・パテー商会、福宝堂、吉沢商店と合併し、日本活動写真株式会社（日活）が誕生すると、日活製作作品の主要な上映館となりました。

人気弁士、生駒雷遊

1917年（大正6年）には、帝国館の主任弁士であった生駒雷遊が千代田館に移籍しました。彼はその話術で人気を博し、「新宿の夢声か、浅草の雷遊か」と称され、徳川夢声と並び称されるほどの人気を博しました。

大正活動映画の時代

1920年（大正9年）4月、浅野財閥の浅野良三が横浜に設立した映画会社「大正活動映画」の直営館となりました。1922年（大正11年）に同社の製作部門が解散した後も、1927年（昭和2年）5月の解散まで、大正活動映画が経営を続けました。

マキノ・プロダクションとの連携

1930年（昭和5年）3月、川端康成は随筆『浅草』で、当時の千代田館が京都のマキノ・プロダクションの封切館であることを記しています。この時期には、マキノ正博（のちのマキノ雅弘）監督の『浪人街・第一話美しき獲物』や『首の座』といった作品が、千代田館を筆頭に全国で公開されました。

新東宝の封切館へ

1950年代には、大蔵貢が千代田館を買収し、1961年（昭和36年）8月の大蔵の会社倒産までは、新東宝の封切館として運営されました。その後、中映が経営を引き継ぎ、成人映画を上映しました。

閉館とその後

1976年（昭和51年）、千代田館は閉鎖されました。隣接する電気館とともに、跡地は更地となり、「蚤の市」として利用された時期もありました。その後、「株式会社電気館」が建築主、「株式会社高村デザイン事務所」が設計を手掛け、商住複合施設「電気館ビル」が建設されました。現在、千代田館の名前は消え、その痕跡は「浅草電気館パシフィックコート」の一部として残るのみとなっています。

千代田館は、浅草の映画文化を支えた重要な映画館の一つであり、その歴史は日本の映画史の一部として記憶されています。

関連項目

電気館
清明館
* 明治館 (劇場)

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