卓庚鉉

卓庚鉉（タク・キョンヒョン、日本名：光山文博）は、1920年に慶尚南道で生まれ、1945年に沖縄で戦死した大日本帝国陸軍の軍人でした。彼は朝鮮半島出身の特攻隊員として知られています。

生い立ちと教育

卓庚鉉は、慶尚南道で誕生し、その後、京都府へ移り、立命館中学校、京都薬学専門学校で学びました。学業を修めた後、彼は軍人の道を選びます。

軍人として

1943年10月、卓庚鉉は特別操縦見習士官一期生に合格。鹿児島県知覧の大刀洗陸軍飛行学校知覧分教所へ赴任しました。1944年10月には陸軍少尉に任官しています。彼は戦闘機「隼」に乗り、特攻隊員として出撃。

1945年5月11日、沖縄飛行場西海面にて戦死。その勇敢な行動を称えられ、没後二階級特進で大尉となりました。

アリランのエピソード

卓庚鉉にまつわる有名なエピソードがあります。出撃前日、彼は知覧の富屋食堂を訪れ、女将の鳥濱トメに自身が朝鮮人であることを告白しました。そして、故郷を想い、アリランを歌ったと伝えられています。この話は、彼の心の葛藤と祖国への想いを象徴するものとして、多くの人々に語り継がれています。

靖国神社遊就館

卓庚鉉の写真は、靖国神社の遊就館に展示されています。これは、彼が日本のために命を捧げた軍人として顕彰されていることを示しています。

映画のモデルとして

卓庚鉉は、特攻隊を題材とした映画のモデルにもなっています。

『ホタル』（2001年、東映）：小澤征悦が演じた金山文隆のモデル
『俺は、君のためにこそ死ににいく』（2007年、東映）：前川泰之が演じた金山少尉のモデル

これらの映画を通して、彼の存在と特攻隊員の苦悩が描かれています。

まとめ

卓庚鉉は、複雑な時代背景の中で、日本軍人として生きた人物でした。朝鮮人でありながら日本のために戦い、若くして命を落とした彼の生涯は、多くの人々に様々な感情を抱かせます。アリランを歌ったエピソードは、彼の心の奥底にあった故郷への想いを物語っており、今もなお、彼の記憶を鮮明に蘇らせます。

参考文献
権学俊『朝鮮人特攻隊員の表象　歴史と記憶のはざまで』法政大学出版局〈サピエンティア 67〉、2022年11月1日。ISBN 978-4-588-60367-9。

関連項目
特別攻撃隊
* 慶尚南道

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