南薩台地

南薩台地とは

南薩台地（なんさつだいち）は、九州の薩摩半島南部、東シナ海沿いに広がる広大なシラス台地です。薩南台地（さつなんだいち）や別府台地とも呼ばれ、古くは別府原と呼ばれていました。この台地は、火山活動によって堆積した火山灰に覆われており、かつては農耕には不向きな土地でした。しかし、1950年代以降、大規模な開発が進められ、現在は鹿児島県を代表する農業地帯へと生まれ変わっています。

地理

南北約12キロメートル、東西約18キロメートルにわたって広がる南薩台地は、鹿児島県の枕崎市、南九州市、指宿市にまたがっています。台地の北部は、揖宿山地や南薩火山群の山裾にあたり、標高は約200メートルです。そこから南に向かって緩やかに高度を下げ、南端部は10メートルから30メートルの波食崖となって東シナ海に面しています。この地形は、台地の形成過程と深く関わっています。

地質

南薩台地の地質は、複雑な火山活動の歴史を物語っています。基盤となるのは、四万十層群や第三紀の安山岩です。その上に、約11万年前に阿多カルデラから噴出した阿多火砕流を起源とする溶結凝灰岩が厚く堆積しています。さらにその上には、約2万5千年前に姶良カルデラから噴出した入戸火砕流を起源とするシラスや、約7300年前に鬼界カルデラから噴出したアカホヤが重なっています。台地の最上部付近には、874年（貞観16年）と885年（仁和元年）に開聞岳から噴出したクロボクやコラと呼ばれる火山灰が堆積しています。

シラス層は保水性が低く、台地上の水源は乏しいという特徴があります。しかし、溶結凝灰岩の割れ目には地下水が蓄えられており、台地南部には湧水も見られます。また、各所には窪地が存在し、雨水が一時的に溜まるため、貴重な水源として利用されてきました。

開発の歴史

シラス層とコラ層の性質から、南薩台地ではかつて、サツマイモやアブラナなど限られた作物しか栽培できませんでした。しかし、戦後の食糧難を背景に、この台地の開発が急務となりました。

1949年（昭和24年）には、枕崎市、知覧町、頴娃町が「南薩地区産業開発期成同盟会」を結成し、地下水調査を行いましたが、十分な水資源は見つかりませんでした。その後、1952年（昭和27年）からコラ層を除去する事業が開始されました。1964年（昭和39年）には、開聞町、山川町、指宿市が加わり、「南薩台地農業用水利用開発期成同盟会」として再出発し、本格的な水源開発調査が始まりました。

この調査結果に基づき、1970年（昭和45年）から「国営南薩台地畑地かんがい事業」がスタートしました。この事業では、台地東部を流れる集川、高取川、馬渡川の水を池田湖に導き、そこからポンプで揚水して台地上の灌漑に利用するというものでした。池田湖は調整池としての役割を担い、大野岳を貫く全長8.46キロメートルの導水トンネルなどが建設されました。

この大規模な灌漑事業は1990年（平成2年）に完成し、南薩台地は一大農業地帯へと変貌を遂げました。現在では、カボチャ、ニンジン、オクラなどの野菜や、鹿児島茶、知覧茶などの茶葉が栽培されており、地域経済を支える重要な役割を担っています。この開発は、自然の制約を克服し、人々の努力によって荒地を肥沃な農地へと変えた、素晴らしい事例と言えるでしょう。

参考文献

• - 頴娃町郷土誌編集委員会編　『頴娃町郷土誌　改訂版』　頴娃町、1990年
• - 知覧町郷土誌編さん委員会編　『知覧町郷土誌』　知覧町長塗木早美、1982年

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