姶良カルデラ

姶良カルデラ：巨大噴火の遺産と現代への影響

鹿児島湾の北部、湾奥に広がる姶良カルデラは、その直径約20kmにおよぶ巨大な窪地が特徴的なカルデラです。南九州に点在するカルデラ群の中でも際立っており、加久藤カルデラと阿多カルデラの間に位置しています。約3万年前と推定される姶良火砕噴火によって形成され、現在も活火山である桜島火山のマグマ供給源としての役割も担っています。

複雑な成り立ち：複数のカルデラの複合体

姶良カルデラは、単一のカルデラではなく、大崎カルデラ、若尊カルデラ、浮津崎カルデラなど複数のカルデラが重なり合って形成された複合カルデラであると考えられています。その形成は一時点の出来事ではなく、150万年前から始まり、少なくとも北側の一部は80万年以上前から存在していた痕跡が見られます。約3万年前の姶良大噴火によって現在の形になったとされており、その規模の大きさは、噴出した入戸火砕流や姶良Tn火山灰の広がりからも明らかです。この大噴火から約2.6万年後に、後カルデラ火山である桜島火山が誕生しました。

カルデラの変遷：淡水から海水へ

姶良カルデラの形成当初は、淡水で満たされていたと考えられています。これは、カルデラ周辺から淡水性生物化石が発見されていることの裏付けとなります。しかし、約1万年前の最終氷期以降の海面上昇と、カルデラ南壁の崩壊によって、カルデラ内部は海水で満たされるようになりました。

現在の活動：海底[[火山]]と火山島

現在でも姶良カルデラ内部では地殻活動が続いており、若尊などの海底[[火山]]や隼人三島などの火山島が形成されています。また、カルデラ中央部地下10kmには、地下100kmのプレート境界で生成されたマグマだまりが存在していることがわかっています。

姶良火砕噴火：大規模なプリニー式[[噴火]]と火砕流

姶良大噴火は、一連の噴火活動の総称で、約2.9万年前（長岡ら、2001）から約3万年前（Smith et al., 2013）に発生しました。まず桜島付近で発生したプリニー式[[噴火]]では、大隅降下軽石や火山灰が噴出しました。噴煙柱の崩壊によって発生した火砕流（垂水火砕流）や、その後若尊付近を噴出源とした妻屋火砕流もこの噴火に含まれます。

最終段階では、若尊付近から大量の流紋岩質マグマが火砕流（入戸火砕流）として噴出しました。この火砕流は九州南部に広がり、最大層厚180mにも達するシラス台地を形成しました。同時に巻き上げられた火山灰（姶良Tn火山灰）は偏西風によって日本列島各地に広がり、関東地方でも10cmの降灰があったと推定されています。噴火によるカルデラの陥没によって、基盤岩が粉砕され、亀割坂角礫と呼ばれる岩塊が周辺に広く堆積しました。

噴出物の総量は、大隅降下軽石、垂水火砕流、妻屋火砕流、入戸火砕流、姶良Tn火山灰などを合わせると、莫大な量に達し、火山爆発指数は7～8と推定されています。

姶良カルデラの将来：噴火の可能性と観測

姶良カルデラは、その巨大な規模と過去の噴火活動から、将来の噴火の可能性が懸念されています。そのため、原子力規制委員会は、原子力発電所の安全確保の観点から、カルデラ海底の常時観測の準備を進めています。

参考文献

荒牧重雄 「鹿児島県国分地域の地質と火砕流堆積物」『地質学雑誌』 第75巻第8号、日本地質学会、1969年
大木公彦 『鹿児島湾の謎を追って』 春苑堂出版、2000年
国分郷土誌編纂委員会 編 『国分郷土誌』上巻、国分市、1997年
町田洋、新井房夫 『新編 火山灰アトラス − 日本列島とその周辺』 財団法人東京大学出版会、2003年
横山勝三 『シラス学 − 九州南部の巨大火砕流堆積物』 古今書院、2003年
その他、多数の学術論文等

関連項目

国道220号
平成5年8月豪雨
シラス (地質)
Supervolcano（超巨大火山）

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