博多港貨物船防波堤衝突事故

博多港貨物船防波堤衝突事故について

2021年11月28日、博多港においてパナマ船籍の貨物船「レディー・ローズマリー」が西防波堤に衝突する事故が発生しました。この事故により、船首部分が損傷し、重油等の油が流出する事態となりました。幸いにも死傷者は出ませんでしたが、港湾機能に影響を及ぼす事態となりました。

事故の概要

発生場所

福岡市中央区那の津五丁目地先、博多港西防波堤の北側。

船舶の情報

船主: RISING SUN LINE, S. A.
船名: LADY ROSEMARY (レディー・ローズマリー)
IMO番号: 9355044
船籍: パナマ
全長: 143メートル
総トン数: 9,576トン
種類: 貨物船（冷凍運搬船、積荷はバナナ）
乗組員: 22人（日本人2人、フィリピン人20人）

事故原因

福岡海上保安部の調査によると、船長の男性（70歳）がレーダーなどの航海計器による十分な見張りを怠り、自船の位置を誤認したことが原因とされています。船長は、本来目標とすべき灯台を別の灯台と見誤り、正確な位置確認を怠ったまま航行を続けました。

刑事手続

福岡海上保安部は2022年1月18日、業務上過失往来危険の疑いで船長を福岡地方検察庁に書類送検しました。

事故後の対応

油の流出と回収

衝突により船首から重油等が流出し、約12キロリットルの油が拡散しました。福岡市や関係機関の協力により、油吸着マット等で大部分が回収されました。

港湾施設の被害

防波堤の一部が幅約20メートル、奥行約4メートルの範囲で損壊しました。応急措置として、ロープと灯火が設置されました。

経緯

2021年11月28日: 午後11時半過ぎ、福岡市博多ポートラジオから福岡海上保安部に「衝突した船がある」との連絡が入りました。貨物船は博多港の岸壁から出港直後、西防波堤に衝突し乗り上げました。乗組員にけがはありませんでした。
11月29日: 福岡市は事故発生を把握し、情報収集を開始。海上保安部からの要請を受け、油防除作業に着手しました。市は「福岡市港湾建設協会」にオイルフェンスの増設を要請。漁業者や市職員も加わり、回収作業が続けられました。また、関係者による連絡会議が開始されました。
11月30日: 漂流した油が志賀島漁港内に流入。漁港入口にオイルフェンスを設置しました。志賀島航路は一部区間で欠航となりました。福岡市は沿岸パトロールを開始。原因者は燃料タンクからの油抜き取り作業を開始しました。
12月1日: 原因者が油回収装置を投入し、オイルフェンス内の油回収作業を開始。福岡市（消防局）も消防艇による油の攪拌作業を開始しました。
12月2日: 福岡市が油回収装置を投入し、オイルフェンス内等の油回収作業を開始しました。
12月3日: 原因者が防波堤にオイルフェンスを設置しました。
12月5日: 原因者が船体の破損した燃料タンクからの油の抜取りを完了しました。
12月7日: 福岡海上保安部は船舶の撤去作業を実施。タグボートで貨物船を防波堤から引き離し、博多港の中央ふ頭に着岸させました。
12月8日: 志賀島航路が全線で運行を再開しました。
12月10日: 福岡市漁業協同組合が博多湾で底引き網の試験操業を実施。水産物への油の影響がないことを確認し、漁業者は操業を再開しました。
12月13日: 福岡海上保安部より、西防波堤の一部が倒壊しているとの通報が発表されました。
12月14日: 福岡海上保安部は、船長が灯台を見間違えたと供述していることを発表しました。
12月16日: 福岡市（港湾空港局）は、海岸域の水質調査で油が認められないことを確認しました。
12月18日: 貨物船はフィリピンの造船所へ出港しました。事故で流出した油の回収はほぼ完了しました。
12月21日: 西防波堤の損壊部に設置していたオイルフェンスは撤去され、ロープと灯火が設置されました。
12月22日: 関係者間で油防除作業の終結が合意されました。

油流出の影響

油の流出は、西防波堤沖側から志賀島南西海域にかけて、また港内側では箱崎ふ頭、須崎ふ頭にかけて確認されました。陸域では主に各ふ頭の岸壁、河川では那珂川、御笠川で油が確認されました。事故発生直後、海上保安部のオイルフェンス展張により油の拡散は食い止められたものの、その後、流出量が増大し、一時的に広範囲に油膜が広がりました。

関係機関の活動

福岡海上保安部: 関係者連絡会議の主催、オイルフェンスの展張、巡視艇による調査、油の攪拌除去など。
福岡市漁業協同組合: オイルフェンスの展張、油吸着マットによる油回収など。
福岡市: オイルフェンスの展張、油吸着マットによる回収、油回収装置による回収、消防艇による攪拌除去など。
その他: 国土交通省九州地方整備局、福岡県、福岡県警察、海上災害防止センター、サルベージ会社など。

損害賠償

油防除作業に関する経費については、関係者が請求金額を取りまとめ後、保険会社と交渉することとされています。

教訓

本事故は、人為的ミスが重大な事故につながることを示しています。今後は、航行時の見張り徹底や、関係機関との連携を密にし、同様の事故を二度と起こさないための対策が必要です。また、迅速な油防除体制を整備し、環境への影響を最小限に抑えることが重要です。1307文字

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