博望坡の戦い

博望坡の戦い

博望坡の戦い（はくぼうはのたたかい）は、中国後漢末期、荊州の博望坡（現在の河南省南陽市方城県）で曹操と劉表（劉備）の間で起きた戦いです。

事前の経緯

曹操は官渡の戦いや倉亭の戦いで袁紹を破り、中原での覇権を確立しつつありました。袁紹に派遣され豫州で曹操の後方をかく乱していた劉備は、袁紹が敗れ曹操が自ら征討にやってくると、曹操と敵対していた劉表のいる荊州へと落ち延びました。劉表は劉備を歓待しましたが、劉備の曹操を攻めるという進言は聞き入れませんでした。曹操は袁紹の侵攻を撃退しましたが、反攻に転じることはできませんでした。しかし、袁紹が202年に急死すると、袁家は分裂し、曹操は袁譚と縁戚関係を結び、南方に目を向けました。

203年8月、曹操は劉表を征討するため兵を起こし、西平に布陣しました。劉表は劉備を派遣して防がせましたが、その年の10月、袁譚が曹操に援軍を要請したため、曹操は軍をまとめて帰還し、黎陽に着陣して鄴攻撃を開始しました。同時期に新野に駐屯していた劉備は北進して博望に陣取り、曹操は夏侯惇・于禁・李典らを残して防がせました。

経過

魏志の「李典伝」と蜀志の「先主伝」に記録があります。魏志によると、袁尚を攻撃するため軍を北上させた曹操の留守に、劉表が劉備に命じて侵攻させました。曹操は夏侯惇に于禁・李典をつけて劉備を防がせたとあります。蜀志では、劉表は劉備を手厚く扱い兵を増やして新野に駐屯させたとあります。劉備は日ごとに声望を高め、荊州の豪族たちは警戒し防備を固めましたが、その軍事力を利用するため、劉備に夏侯惇と于禁を博望の地で防がせたとあります。

劉備はある日、自陣に火を放ち、撤退を装いました。夏侯惇は追撃しようとしましたが、李典は伏兵の存在を疑い追撃を止めました。夏侯惇は于禁と共に追撃をかけましたが、李典は留まって守りを固めました。劉備は伏兵を用意していたため、夏侯惇達は伏兵に攻められ撃破されました。李典は救援に向かいましたが、劉備は軍を撤退させました。この時、趙雲が夏侯蘭を捕虜にしたとされています。その後、李典は袁尚を攻撃するため鄴へ向かい、夏侯惇も鄴攻撃に従軍するため兵を引きました。

三国志演義における博望坡の戦い

三国志演義では、博望坡の戦いは、劉備の軍師となった諸葛亮（孔明）が初めて采配を振るった戦いとして描かれています。

華北をほぼ統一した曹操は、南の荊州に目を向けました。当時、荊州に勢力を持っていたのは劉表であり、劉表は劉備を庇護し、曹操の勢力との前線である新野に駐屯させていました。曹操は劉備を討伐するため曹仁達に大軍を与え攻撃させましたが、劉備の軍師である徐庶の計略により敗退しました。曹操は程昱の策略により徐庶の母親を捕らえ、偽手紙を送り徐庶を引き離しました。しかし、徐庶は友人の諸葛亮を推挙し、劉備は三顧の礼により諸葛亮を軍師として迎えました。

徐庶より諸葛亮の評判を聞いた曹操は、夏侯惇・李典達に大軍を与え劉備討伐に向かわせます。一方、劉備の幕下では、諸葛亮と劉備との親密さが、関羽や張飛の不満を募らせていました。諸葛亮は劉備に対し、関羽と張飛を指揮するために剣を与えるよう願い出て、軍師としての采配を振るわざるを得ない状況でした。

諸葛亮は劉備軍の諸将を伏兵として配置した上で、夏侯惇が指揮する曹操軍を劉備と趙雲の囮兵によって博望坡に誘い込み、火を放つ計略をたてました。李典は火攻めに警戒するよう夏侯惇に注意しましたが手遅れとなり、大混乱に陥った曹操軍は関羽・張飛達に蹴散らされ、夏侯蘭も討ち取られるなど大敗を喫しました。

この戦いは、諸葛亮の名采配を中心に描かれ、関羽と張飛を中心とした古参の武将達が、諸葛亮の力量を認め、全面的に信頼を寄せる契機となる戦いとして位置づけられています。

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